ポケゼミ報告2003「森林資源学ゼミナール」

フィールド科学教育研究センター 教授 竹内 典之、助手 梅本 信也

2003年8月8~13日
「北海道東部根釧地方の自然景観」

 フィールド科学教育研究センター北海道研究林白糠区研究管理棟を拠点に6泊7日のセミナーを実施した。本セミナーは、気象・地象・海象、生物、人為の相互関係によって様々な景観が創り出されていることを実際に自らの目で確かめ、様々な景観を創り出している要因について検討するとともにどのような生物(特に植物)がどのような生活を営んでいるかを解明していくための突破口を新入生諸君に提供することを目的として開講したものである。クラブの合宿等と重なってしまったため受講生は工学部、経済学部、法学部各1名と農学部3名の計6名であったが、8月9日には長尾京都大学総長、8月9日~12日には田中センター長の参加も得て、ほぼ初期の目標は達成できたのではないかと思う。
8月8日(金):受講生6名3時過ぎまでに全員無事集合し、ガイダンスと講義「根釧地方の自然」
8月9日(土):台風10号の影響で朝から生憎の雨。午前中は釧路湿原の観察に急遽変更した。前日釧路湿原の視察を終えられた総長も学生達と一緒にもう一度観察したいということで合流された。低層湿原、高層湿原、湿原端旧軌道敷の景観の変化を観察した。午後も、雨は降り続いていたが全員意気盛ん、白糠区の森林観察を実施した。当初予定の観察コースは短縮せざるを得なかったが、尾根筋の針葉樹の多い森林から低地部のほとんど針葉樹を欠く落葉広葉樹の森林への変化を十分観察することができた。帰棟後、総長の参加も得て、6名の学生がそれぞれ観察結果を踏まえて数分程度のプレゼンテーションを行い、討論、アドバイス等を行った。また、総長からは、京都大学の基本理念についてレクチャーののち学生諸君への激励の言葉を頂いた。
8月10日(日):道内に多大な被害をもたらした台風も去り、快晴、道東には珍しい暑さであった。2班に分かれ学生実習用固定標準地で樹種同定と直径測定の実習およびデータ整理とコンピュータ入力の後、過去のデータとの比較検討を行い、夕食後、班毎に結果を発表し、検討した。
8月11日(月):尻羽岬において風衝地の草原、ミヤマハンノキ林、ダケカンバ林、針広混交林への変化を観察後、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター厚岸臨海実験所を訪問した。厚岸臨海実験所では、向井宏教授から「森と海の相互作用」の講義を受けた。向井教授自身が蓄積された豊富なデータに基づいた講義は、説得力があり、学生達には大いなる刺激となったと思う。
8月12日(水):釧路湿原での植生調査を、温根内地区に設けられた木道沿いで2班に分かれて実施した。午前中に高層湿原各5プロット計2.5㎡、午後には低層湿原各10プロット計5㎡の調査を行い、夕食後、データ整理と検討を行った。ほとんどの学生が植物図鑑を見るのも始めてで、植物同定には苦闘していた。
8月13日(木):前日と同様温根内に赴き、湿原端の旧軌道敷において各班10プロット計5㎡での植生調査を行い、帰棟後データの整理と検討を行った。夕食は、翌日のレポート作成は残すもののフィールド実習は全て無事終了を記念しての打ち上げパーティー、教員2名は早々にダウンしたが、2時過ぎまで討論をしていた学生もいたようである。

セミナーを終えて:森林科学科の2名以外は、京都で行ったガイダンスではじめて顔を合わせ、会話は北海道に来てからであろうが、合宿生活ですっかり仲間意識ができたようである。昼食の弁当以外は全て自炊としたが、実習や講義等への支障も全くなく、お互いがうち解ける良い機会になったようである。

反省点:シラバスの情報だけでなく、ホームページ等によりセミナーの目標、プログラム、講義・実習内容等を提供する必要があるであろう。

- 実習の様子 -