フィールド科学教育研究センター 講師 中島 皇
2003年8月10~13日
芦生研究林で行われた3泊4日の集中講義(合宿方式)形式のセミナーの報告を行う。参加者は2名(男女各1名)で、何れも農学部学生であった。セミナーの目的は、「原生的な森林、そこにある天然林・二次林・人工林を体感する。人と自然との関わり方を学ぶとともに、この森の利用とその影響及び管理について考える。」ことである。フレッシュな新入生諸君にフィールド研究入門の前段階として、自然と人間の関わり方に興味を持ってもらうために開講された。
8月10日(日)出町柳駅前、10:00発京都バス広河原行きに学生2名乗車。広河原へは正午前に着くはずが、迎えに出ても二人の姿は無し。いきなりトラブルである。芦生へも連絡はない。後で聞くと、二人は実習開始前から自然(田舎、トラブル対処法)の厳しさを味わっていたのである。どうにか2時間遅れで芦生に到着し、セミナーは始まった。由良川本流沿いのトロッコ道で、芦生の標高の低い地域の代表的な樹木と川沿いの植生や地形を見学した。このセミナーでの食事はすべて自炊である。自然の中で最も重要なことは、「自分の力で食べ、自分の身は自分で守る。」ことである。この点は大学での2回の説明会でも念を押していたため、準備は万全のようであった(夕食はカレー)。夜は、芦生研究林の概要説明とこの森が持つ問題点の解説を真剣に聞き、質問していた。
8月11日(月)9:00出発。内杉谷林道を走って山に上がる。途中、幽仙谷集水域天然林研究区で大面積・長期プロットと暖温帯と冷温帯の境界について説明を受け、林道権蔵線からは丹波高地を自分の目で確認した。杉尾峠下から歩き始めて上谷歩道へ。由良川最源流・最初の一滴を見つめる。前日の強い夕立で、水かさは増し、歩道はぬかるんでいる所も多かったが、原生的な雰囲気を持つ森を楽しみ、実感しているようであった。この日は芦生の標高の高い地域の代表的な樹木や植生と準平原状の地形を時間をかけて見学した。そのため、予定より1時間以上遅れて長治谷へ到着。量水堰、大桂、二次林と人工林を観察しながら、山から事務所に戻った。スパゲッティの夕食後、翌日のアンケート調査について説明を受け、準備を行う。
8月12日(火)残念ながら予報通りの雨模様。この入林者に対するアンケート調査が一つの目玉であった。お盆の時期にセミナーの日程設定をしたのも、そのためである。事務所構内の入り口にテントを立てて、椅子と机と七つ道具を用意した。午前9時から調査を開始。午前中に雨は上がったものの、真夏なのに肌寒く感じるくらいで、入林者は少なかった。午後4時までに25名の協力が得られた。初めての経験に戸惑いも多く見受けられたが、アンケート調査の難しさ、入林者は様々な人がいることを入林者との対話で感じとったようだ。夜は打ち上げ。この日の夕食だけは教官がサーブした(バーベキュー)。
8月13日(水)最終日はアンケート調査のデータ整理・解析の実習である。アンケートは25枚と多くなかったので2人で行うには適当な量であったが、結果の判定にはサンプル数が少ないという難点があった。レポート作成と宿舎・食堂の片付け、感想文とフィールド科学教育研究センターからのアンケートを書いてセミナーは終了となった。
反省点・感想:少人数セミナーの規定(1回生の前期)によると、集中講義型(合宿方式)のセミナーは休日を使うか前期試験のすぐ後に集中するので、日程調整が難しい。学生だった頃、教養部の1泊研修旅行は非常に為になり、印象も強かった。合宿型のセミナーが続けられることを願っている。
- 実習の様子 -