外来種オオヒキガエルの防除法

基礎海洋生物学分野/白眉センター 原村 隆司


 オオヒキガエルは、サトウキビの害虫駆除動物として世界中の各地で移入されました。日本でも小笠原諸島や石垣島に移入されたのはそのためです。しかし、サトウキビの害虫はほとんど食べずに在来の昆虫などを食べることや、強い毒を持っているためオオヒキガエルを誤って食べた捕食者(蛇や鳥など)が死亡してしまいます。そのため、世界中で駆除が必要な外来種とされています。私のオオヒキガエル防除研究の視点は、「動物行動学・行動生態学を応用したもの」です。対象動物に備わる行動・性質を外来種防除に利用しようと考えました。動物行動学では「超正常刺激」という現象が知られています。これは、実物よりあり得ないほど人為的にデフォルメされた刺激の方に動物がより引きつけられてしまう現象のことです。例えばユリカモメという鳥の親は本物の卵よりも極端に大きな偽物の卵の方を好んだりします。この現象を私の研究に応用してみました。ヒキガエルは求愛の際に雄が鳴き声を発しますが、雌はより低く鳴く雄を好みます(体の大きい雄ほど低い声を出すため)。そこで、人工的により低い鳴き声(雌により好まれる声)を作りだし、沢山のオオヒキガエルを集める手法を開発しました(図1)。その他、オタマジャクシの共食い行動を利用した罠の開発(オタマジャクシは卵を共食いし、その際に卵から出るわずかな毒の匂いを頼りに卵を見つける。そこで、成体が持つ毒を疑似餌として利用することでオタマジャクシを捕獲する)や、オタマジャクシの成長を抑制するフェロモンなど(図2)、日本とオーストラリアの両国で通用する防除法を開発することができました。
 私は2013年から瀬戸臨海実験所を拠点に両生類の研究を行ってきました。5年間の白眉プロジェクト期間中に2つやり遂げたい事がありました。1つ目は、外来種オオヒキガエルの研究をオーストラリアのシドニー大学のRick Shine教授と一緒に行うことで、Crossland 博士(Shine教授研究室のポスドク)と共に日豪合同で外来種オオヒキガエルの共同研究を進めることができました(図3,4)。2つ目は海岸に生息するリュウキュウカジカガエルの研究を東京大学大気海洋研究所の竹井祥郎教授(現在は名誉教授)と共に行うことです。この2人の先生には色々とお世話になり(また心配もかけ)、ぜひとも共同研究を通して恩返ししたいと思っておりました。今後も沢山の研究者の方々と協力して外来種研究を発展させたいと思います。

ニュースレター44号 2018年2月 研究ノート