実習報告2017 「博物館実習(自然史)」

森林情報学分野 助教 嵜元 道徳


 本実習は,「博物館」に収集・保管されている自然史標本資料の機能を理解するために,動物園,植物園,水族館などで収集・管理されている自然史標本資料の取り扱いや利用法の状況などを見学する一方で,それぞれの施設で行われている社会教育・研究活動を知ってもらおうとするものである。毎年,5部局(理学研究科,農学研究科,博物館,野生動物生物研究センター,フィールド研)の教員がリレー講義方式で計10回実施している。その中で,マツ属をはじめとする外国産針葉樹を多数植栽し植物園的な面を有している上賀茂試験地では,「上賀茂試験地の見学実習」という内容で実習が行われており,2017年度は,5月12日に,総合人間学部1人,理学部1人,農学部4人,理学研究科4人の計10人の出席を得て,実施された。
 当日は,見学実習に先立ち,フィールド研と試験地の概要,京都市周辺と上賀茂試験地内の森林の特徴,マツ属や針葉樹の多様性と系統についての講義を行った。博物館運営に関わっていく際には,ふつう,各々の博物館が置かれている地域の自然史などの理解も必要となる場合が少なくないが,試験地内にある二次林と樹木を観察する一方で,それらの特徴,京都盆地の地域性など自然史的側面について学んだ。また,植栽されているマツ科やヒノキ科などの多種多様な外国産針葉樹のコレクションを見学する一方で,多数植栽されている見本林の維持管理や近縁種見本樹の維持の難しさなどについても学んだ。さらに,標本館に保存されているマツ属の球果や多くの針葉樹の材なども見学した。
 見学終了後にレポートを課したが,普段何気なく眺めている京都市周辺に広がる二次林の理解が深まったこと,多種多様な針葉樹コレクションの多さの驚き,多様な近縁種を維持管理していくことの難しさ,などを認識したことが,昨年と同様に書かれており,多少の効果はあったようだった。