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教育活動

実習報告2018 「森里海連環学実習IV:沿岸域生態系に与える陸・川・人の影響」

基礎海洋生物学分野 教授 朝倉 彰


 瀬戸臨海実験所は紀伊半島南西部に位置し温帯に立地しながらも、熱帯にその源を発する黒潮の影響から、沿岸域では熱帯性の生物も多数みられ生物の多様性が非常に高い。特に実験所北側に広がる田辺湾は、様々な底質環境が見られ、そこに様々な特色ある生態系がある。また田辺湾には、大小いくつかの川が注ぎ、田辺市・白浜町という小都市が面していて、河川からの海に対する影響も大きい。2019年3月21~26日に実施した本実習は、こうした立地条件を生かして、河川の上流、中流、河口域、外洋性海岸にいたる様々な生態系における生物相とその環境条件を調べることによって、森里海と連環と生物の多様性および棲み分けについての理解をすることを目的とした。
 場所としては、和歌山県田辺市、上富田町、白浜町を流れる富田川の支流の高瀬川、そしてその川が注ぎ込む田辺湾を選んだ。高瀬川において、上流、中流、下流のマクロベントスを採集し、環境条件としての水質の調査を行った。また高瀬川河口域にほど近い対の浦での磯での調査を行った。高瀬川で採集された生物の大半は水生昆虫(幼虫)で、ほかに淡水エビやハゼなどの魚が採集された。また河川と海を行き来する回遊性のエビやカニも採集された。河口域では汽水・干潟性の甲殻類や軟体動物が多く、対の浦では紀伊半島の岩礁で典型的に見られる軟体動物、甲殻類、棘皮動物が見られた。河川から海洋にいたる環境条件の変化とそれにともなう生物相の変化について、議論を行った。