白浜水族館展示生物の収集活動

瀬戸臨海実験所 山内洋紀

 瀬戸臨海実験所には、一般の方も入館可能な水族館が附設されています。その歴史は古く、昭和5(1930)年に一般公開を開始し、その後増改築を行いながら今年で開館から91年目を迎えました。展示生物は、実験所が置かれている和歌山県白浜町周辺に生息する生物にこだわり、無脊椎動物と魚類を合わせて常時約500種を飼育しています。実験所は大正11(1922)年の開所以来、伝統的に海産無脊椎動物の研究を行ってきた施設であることから、特にそれらの展示に力を入れており、展示数は国内有数を誇っています。
 展示生物の収集は、技術職員が担当しています。実験所周辺にある磯などでのタモ網を使った採集や釣り、さらには素潜りやスキューバダイビングによる採集も行っています。また、地元漁業者の方々にご協力いただき、売り物にならないような生物を収集することもあります。特にイセエビ漁が行われる秋から翌年の春までの期間中は、週一回漁港へ出向き、漁で混獲されるカニやヒトデなどの副産物を収集しています。これらの収集活動を通じて、これまでに採集例の少ないものや初めて採集されるような貴重な生物が得られることがあります。このような場合には、水族館での展示終了後に標本を作製し、研究者へ試料として提供することがあります。最近では、イセエビ漁で獲れたヒトデ3種が紀伊半島初記録として報告されました。このようなデータの蓄積は、生物の分布や生物地理を研究する上で非常に重要なことです。今後も展示生物の充実を図ることだけでなく、研究活動へ積極的に協力していきたいと考えています。

ニュースレター55号 2021年10月 技術ノート