ANA私の青空 中標津空港「シマフクロウの森」報告書
(報告者:徳地直子)
平成22年6月5日(土)、北海道中標津町で「ANA私の青空 中標津空港シマフクロウの森」が開催された。当日は、くもったものの幸い雨にはならず、これまで数度悪天候での中止を招いた講師(私)に対し、なんとか実施させよう、というスタッフの執念のようなものを感じた。参加者は地元の方々、中標津空港関係者や遠く札幌の空港関係者、さらにはANAエコツアーの参加者を含む約200名に及んだ。中標津は世界自然遺産知床の玄関口として使われており、今回植樹する森もシマフクロウが生息する知床の森のようにしたいということであった。大勢の来賓の方々よりごあいさついただき、植樹祭はにぎにぎしく開催された。
来賓あいさつに続いて、「青空塾」となった。今回は、シマフクロウというシンボルがあるので、それにちなんでのお話をさせてもらった。シマフクロウは大きなミズナラなどの木のうろを巣にして、フクロウにしては珍しく、魚を主食としている。森にいるシマフクロウは魚をいうまでもなく川で得ている。つまり、シマフクロウに来てもらいたいと思ったら、①大きなミズナラの木が必要②川も必要③川には魚が必要なのである。これは、つまり、森だけ作ってもだめだ、ということで、森にある川も大事にしなければいけないということである。
そこで、今年度から学術振興会のポスドクとして私の部屋に来ている佐藤拓也さんの最近の研究成果である、ハリガネムシが森の昆虫に寄生し、寄生された昆虫が脳を操作されて川に飛び込み、ハリガネムシは川で産卵、虫のほうは魚のえさになる、という森と川のつながりの話をさせてもらった。非常に新しい発見なので多くの方がはじめて聞く話だろう。そう思うと、話をしているうちに、私の説明でわかっていただけるかどんどん心配になってきた。“・・・・で、おわかりいただけましたか?私は何をいっているかわからなくなってきました。”と正直にいって、おしまいにさせていただいた。後で、“初めて聞いた”、 “面白かった”、とわざわざ伝えに来てくださる方がおられたので、一部の方にはおわかりいただけたようである。非常にうれしかった。森を作る作業を通じて、その周囲にも気持ちがいってくださるといいなと思った。
そのあと、植樹を行った。今回の植樹地は空港に非常に近く、飛行機の発着時に上を通る場所であるということで、特に、常緑性のアカエゾマツと落葉性のカラマツを用い、ANAの文字が浮かび上がるように詳細に植栽位置が計画されていた。何年かすれば、夏にも緑の違いでANAが、冬にはカラマツが落葉してくっきりとANAが浮かび上がるだろう。楽しみである。次いで、全日本空輸(株)CSR推進室の佐藤祐子さんがこれも今回特に力をいれられたシマフクロウのモニュメント付の植樹の看板にシャンパンをかけるイベントが行われた。雨の前に!というやや前倒しのスケジュールであったが、予定されていた行事をすべて無事に終えることができ、大成功(?)のANA中標津空港、シマフクロウの森であった。