芦生研究林のドローン活用

芦生研究林 北川 陽一郎

 芦生研究林では、森林の樹種の多様性や材積(立木や丸太の体積)などを把握するために、調査区を設けて樹木調査を行ってきました。芦生研究林ではシカの食害によりブナやトチノキなどの苗木が順調に成長できず、また台風などで倒木が多く発生しているため、今後は林冠ギャップが拡大し、土壌侵食が進むことが危惧されています。このような起こりつつある森林の変化を早期に定量的に捉え、対策を講じるため、2018年から技術職員が中心となってドローンを活用した調査を行っています。具体的には、ドローンで上空から森林を連続撮影して、写真解析ソフトウェアで処理することで、オルソモザイク画像や3次元モデルを作成しています。研究利用の多い上谷エリアを中心に順次作成しており、これらと地表面の標高値を表すEM(数値標高モデル)とを組み合わせて、林冠ギャップを見つけたり、樹種の分布を把握しようとしています。
 さらにこうしたデータを芦生研究林の基礎データとして研究者や学生に提供し、研究・教育活動に活用してもらう予定です。すでに作成したオルソモザイク画像は、研究者が調査サイトを決める際にも利用されました。ドローンに関連する技術は速いスピードで変化しており、ドローンで取得したデータから森林バイオマスの推定や種多様性把握も可能になりつつあります。こうした新しい技術も取り入れて、今後も芦生研究林の森林管理・保全や研究・教育活動の発展に貢献したいと思います。

ニュースレター60号 2023年6月