新人紹介 坂野上 なお

新人紹介  坂野上 なお

森林情報学分野 坂野上 なお 講師

 2023年4月1日、森林情報学分野の講師に着任しました。普段は本部研究室に勤務し、芦生研究林を兼任しています。林業経済学という分野で木材の生産・流通を専門にし、木材市場、製材工場、大工・工務店、ハウスメーカーなどの調査を多く行ってきました。つまり私のフィールドは町場で、森林とは離れたところでの仕事が中心でしたが、研究林・試験地の森林資源と関わりのある研究もいくつか行いましたので紹介します。
 文化財建造物の屋根葺き材料として使用される檜皮(ひわだ)は、生きたヒノキ立木から外皮を剥ぎ取ったものです。この行為が木材に悪影響を与え、後々材を販売しても安値になるのではという懸念がありました。しかし、徳山試験地の樹齢100年前後のヒノキ人工林に実験林を設定して檜皮採取の影響を検討する共同研究の結果によって、高い技術を持つ技術者が採取すれば悪影響はないとわかりました。また木材市場で檜皮採取木の取引価格や売り手と買い手の認識を調査したところ、檜皮採取木がとりたてて低評価ではないこともわかりました。
 もう一つは、芦生研究林のトチノキ林の種子・栃の実を利用した伝統文化の継承とトチノキ林の保全の両立を目指す、地域協働的で実践的な研究です。德地直子教授を代表とする共同研究の中で、栃の実食文化の歴史的背景を明らかにしたり、地域社会との相互理解を進めたり、栃の実採取のルール作りなど、従来の「研究」の枠にあてはまらない活動に参加しました。今後とも、森林資源と人間社会との関わりを解明しつつ、よりよい関係へと導けるような研究に取り組んで行きたいと思います。

ニュースレター60号 2023年6月