森林生態系部門 田中 拓弥
2022年4月、公益財団法人イオン環境財団と京都大学フィールド科学教育研究センターが連携し、「新しい里山・里海 共創プロジェクト」がはじまりました。締結された協定では、京大フィールド研が提唱してきた「森里海連環学」に基づきながら、人材育成、教育研究、社会貢献、自然と生態系の保全などの分野で互いに交流・協力し、新しい里山・里海を共創する素地を作り出し、持続可能な社会の発展に寄与することが目標とされています。
4年間のプロジェクトでは、和歌山県白浜町にある瀬戸臨海実験所、京都府舞鶴市にある舞鶴水産実験所、京都市にある上賀茂試験地を主たるフィールドとして、2023年3月から地域の方々と連携する活動が実施されています。
瀬戸臨海実験所では、畠島でのビーチクリーン活動を6月に行い、同町と田辺市などの大人や子どもたちが参加しました。普段は自由に出入できない畠島ですが、その美しい浜にもプラスチックやビンなどのゴミが、多数漂着していました。集められたゴミには生活で使用された容器が多く含まれ、陸域の人の暮らしとのつながりが強く感じられました。
舞鶴水産実験所では、柴(小枝を束ねたもの)を沈めて魚を捕まえる昔ながらの「柴漬け」漁の試みに、イオンチアーズクラブの子どもたちが参加しました。4月、スギとシラカシの柴を別々に沈めて、住み着く生物を実験所の教員が潜水観察しました。7月、引き上げられたすべての柴から、魚やヒトデ・ナマコなどの生物が見つかりました。水槽に設置した小さな柴に対する魚の行動実験も行われ、柴の中の魚の様子を、興味津々子どもたちは観察していました。
上賀茂試験地では、4月から「里山おーぷんらぼ@上賀茂」がはじまりました。高校生、大学生、企業、団体など多様な方々が月1回程度集まって、試験地内の里山エリアでの取組について検討しています。楽しみながら里山に親しむ体験プログラムを高校生とともに考える取組、衣食住で利用する植物について学べる森づくりを企画する取組など、森・里・人がつながる試みを皆さんと模索しているところです。
このプロジェクトでは、森里海の連環を研究することに加えて、上記のような地域社会との連携活動を行いながら、参加者間や里山里海団体を含む地域の多様な主体間の共創を促すために、何が大切かを考えていきます。プロジェクトの活動にご関心のある方は、ウェブページをご覧ください。
ニュースレター61号 2023年10月