和歌山研究林長 德地 直子
2024年11月28日に和歌山研究林の地上権返還に伴う記念イベント「100年目からの新たな歩み~99年を振り返る~」を有田川町清水文化センターにて開催しました。当日は有田川町の中山正隆町長、地権者であるマルカ林業株式会社の海瀬隆太郎社長、有田川町の林業や教育に関わる皆様、和歌山研究林で長期に研究を行っておられる生態学研究センターの佐藤拓哉准教授をはじめとし、これまでの和歌山研究林、そしてこれからの和歌山研究林を考える上で、欠かすことのできない大勢の皆様にご出席をいただき、100年の節目を迎えることができました。森林系の多くの教員ならびに技術職員、そしてかつて和歌山研究林に勤務された技術職員OB の皆さんも参加くださり、終始和やかで前向きなイベントとなりました。
第1部では、これまでの和歌山研究林と町とのかかわりについて中山町長からご挨拶をいただきました。続いて、長谷川尚史准教授による和歌山研究林の概要紹介の後に、佐藤准教授より「森と川と海をつなぐ細い糸-和歌山研究林での大規模実験の日々」と題した、長期にわたる研究の様子とその成果について講演いただきました。そして、99年の長きにわたり研究林を貸与してくださったマルカ林業株式会社の海瀬社長へ京都大学総長からの感謝状が贈呈されました。
中央高等学校校長と德地でのパネルディスカッションを行いました。パネラーの皆様から有田川町と研究林のつながりについて、これまで研究林で行ってきた小中学生や有田中央高等学校清水分校の高校生への出前授業や森林体験などを高く評価していただき、今後も積極的な関わりを続けることや、林業に関しても大学の知見を地域に還元していくことへの期待が語られました。
林業の先進的な地域に位置する和歌山研究林は、人工林の造成について教育および研究を行うように設定されており、これまで樹下植栽をはじめ人工造林など多くの研究が行われてきました。学生たちは、これら人工林と実際の自然環境を通じて、環境科学や生態学、持続可能な開発について学び、実習を通じて実践的な経験を積むことができました。人工造林が主流でなくなった近年では、環境省のモニタリングサイト1000のコアサイトとして森林動態の長期モニタリングや、佐藤准教授のアマゴによる森と川のつながりなど多くの研究がなされてきました。地上権をお返しした後は、林道整備の問題などにより現地での利便性が低くなるものの、研究を続けていけるように手続きを進めています。今後も地域との連携を絶やさず、次の100年につなぐ京都大学の窓として活動する和歌山研究林を、引き続き、どうかよろしくお願いいたします。
ニュースレター65号 2025年02月