研究フィールド紹介 里域ステーション 北白川試験地

北白川試験地長 西村 和雄


 北白川試験地では現在、老齢化木のチェックと伐倒・除去作業をおこなっています。この作業は結構大変です。東は試験地の範囲が結構広く、農学部グランドの北側にある門の横まで。西の方は農場の北側に伸びて、さらに南へと、農場を半周囲むように縁取られています。

 試験地には、423種、およそ1,039本もの樹木が、樹木識別実習用と見本林として植栽されています。これらの樹木の加齢に加えて、樹高が高くなってきています。この影響は樹木が立ち並んでいる場所の北側に隣接する民家へ、いろんな障害となってあらわれています。落ち葉による樋の詰まりや清掃、日陰になって風通しが悪くなるなど、日常生活への影響もおおきいのです。また、近年は新たな問題がおきてきました。それは、樹幹の内部に腐朽が進行していることです。

 樹幹内部の腐朽は、枯れ落ちた枝の根元から木材腐朽菌が樹幹内部へと侵入するためなのです。この結果、一部の樹木には風倒の危険が予測されるようになってきました。たとえば昨年はじめまで、旧演習林の敷地玄関右側にソメイヨシノが2本ありましたが、このうち1本は地上2メートル上のところに腐朽が見つかり、このままではいつか太い枝が落ちるか、腐朽の下部から木全体が倒れる危険性があるとの判断で、伐倒することにしました。ところが最近残りの1本も樹幹内部に腐朽が進行している徴候が見つかり、いずれ早い段階で伐倒しなければならない事態です。

 演習林の景観が台なしになるとの声もありますが、危険を看過すべきではありません。すでにかなり太い枝が落下しました。樹下に駐車している車がなかったのが幸いです。もっともソメイヨシノとしてはすでに寿命が来ているといえます。後継の桜を考えてはいますが、近くに生えているセンペルセコイアや、エンピツビャクシンなどによる被陰があるので、植栽しても生育するかどうか疑問もあります。

 樹幹内部が腐朽している樹木については、北側の民家にたいして風倒の恐れがあるものは、すべて伐倒して撤去する予定です。腐朽があまり進行しておらず、当面風倒の危険がないものについては、先端部の芯とめと、大幅な剪定をおこない、落ち葉の最小量化と風通しのよさを確保する予定にしています。拙速ですすめる予定です。

 試験地全体の心配事としては、園地の地下水位がかなり高いことにあります。10年ほど前、ちょうどj.Podの建っているあたりに、直径60センチをこえる洋種の松がありましたが、台風の風で東側へ倒れてしまいました。幸い怪我人はありませんでしたが、道端に駐車していた車が2台とウツクシマツが下敷きになってしまいました。倒れた松の根株をチェックしましたが、樹体を支えるべき直根がなく、側根の発達も貧弱で、これでよく立っていたものだと感心したことがありました。これは地下水位が高く、根が地中へ発達していないためなのです。台風の襲来時、おなじことが試験地のどの木におこっても不思議ではないのが現状です。京都大学構内の数少ない緑地として、景観を保つことと同時に、安全をも確保しなければならないのが急務だとかんがえています。

ニュースレター7号 2006年3月