森林ステーション和歌山研究林

和歌山研究林長 徳地 直子


概要
 和歌山県有田川支流湯川川の源流部に位置し、大正15(1926)年1月に、和歌山県有田郡八幡村の海瀬定一氏所有の山林564.5ha(1~6林班)に99ヵ年の地上権が設定されたことに始まる。その後の変革を経て、現在では842ha となっている。人工林の教育研究の場として適地であるため、昭和の初期には樹木の疎な所へのスギ・ヒノキの樹下植栽が行われたが、戦中戦後の混乱期には伐採・造林ともに縮小した。昭和31(1956)年以降には大規模な皆伐が行われるようになり、その伐採跡地には主にスギ・ヒノキが植栽された。伐採面積の縮小により大面積造林が終了した現在、施業の中心は造林地の保育管理となっている。現在のスタッフは、教員2名、技術職員6名、非常勤職員1名である。

研究
 地上権設定当初から手を加えずに維持されてきた八幡谷学術参考林は、現在では和歌山県には残り少ない天然生モミ・ツガ林であり、古くからその生産力・動態・土壌動物相・昆虫相などの研究が数多くなされている。加えて、和歌山研究林は人工林率が50%を上回りフィールド研の他の研究林に比べて人工林率が高く、森林施業に関する研究も積極的に行われている。近年では、施業が森林の環境創造機能に与える影響などが調査されている。特に、現在わが国の人工林の多くが直面している間伐に関して、これまで見過ごされてきた間伐が森林環境に及ぼす影響を評価し、森林の多面的機能を維持した施業方法の検討が進められている。

教育
 研究林が有田川の源流に位置することを利用し、全学共通科目である“森里海連環学実習”やポケットセミナーなどのフィールドとして利用されている。学外での教育利用としては、和歌山県立有田中央高等学校清水分校との共催で「林業に関する科目」を設置し、2002年度より開講している。また、近隣の小学校も体験学習の場として利用しており、地域との連携が進んでいる。

ニュースレター9号 2006年12月