フィールド研「第3回時計台対話集会」報告

海洋生物多様性保全学分野 白山 義久


 平成18年12月23日(土)にフィールド研主催で「第3回時計台対話集会」を開催した。今回の対話集会の主題は、“森里海連環学が、日本の木文化を再生する”というものであった。田中フィールド研センター長の開会挨拶のあと、まず村田泰隆氏(株式会社村田製作所代表取締役社長)と尾池和夫京大総長のお二人による対談が行われた(写真)。21世紀の人類社会と森里海連環学とのかかわりなどを中心として、さまざまな話題に関して対話が繰り広げられたが、特に将来の地球環境を守る視点と森里海連環学の視点とのシナジーが強調された。
 次に竹内典之フィールド研教授と山田壽夫九州森林管理局長による講演が行われた。竹内教授はあるべき森林の姿と現在の日本の森林の状況とのギャップをデータとともに示し、問題の深刻さを明らかにするとともに、問題解決のために考慮すべき課題を提案した。また山田局長は我が国の森林管理に大きな責任を負っている林野庁の現状と指摘されている森林の問題を解決するために実施されている施策について、動画を交えて詳細に報告され、林業の現状は一時期のどん底から改善しつつあるとの認識を示した。
 二番目のセッションの始めには、アウトドアライター天野礼子氏が司会をして、「林業が“生業(なりわい)”とよみがえることが、木文化を再生する」というテーマでパネルディスカッションが行われた(写真)。パネラーは、小林正美京大地球環境学堂教授、小池一三小池創作所代表、石出和博HOP グループ代表、中島浩一郎銘建工業代表取締役社長の各氏で、いずれも全国各地で多様な木の使い方を実践している経験豊かな論客ばかりであった。特に現在の国産木材の需要の低迷とその解決のための提案は、どれもユニークな観点からの説得力のある提案で、今後の日本林業の再生可能性を十分に期待させるものだった。
 最後に、時計台対話集会において重要な位置を占める、フロアディスカッションを行った。講演者やパネラーに対し、高知や新潟など他県からいらした方々も含め多数の参加者から興味深い質問やコメントなどの発言があり、パネラー各位には各々の発言に対して、丁寧に応対していただいた。
 今回は新しい試みとして、時計台記念館2階の国際交流ホールにおいて、フィールド研各施設の紹介と、フィールド研が展開しているさまざまな研究プログラムの紹介などが、パネルを使って行われた。このパネル紹介はなかなか好評で、熱心にフィールド研のメンバーに質問をしている参加者の方々を多数見かけた(写真)。
 今回の対話集会の参加者は430名を越えた。アンケート調査の結果、地理的な条件から、参加者は近畿二府四県が中心だが、それ以外にも、高知・福井・三重・愛知・千葉・長野・新潟さらには沖縄県からの参加者もあったことがわかった。また京都大学の学生の参加も少なくなかった。参加者からは「講義では林業の暗い話ばかり聞かされていたが、今日のイベントでは明るい未来もあることがわかり、勇気づけられた」などの感想が、寄せられた。
 またアンケートの結果から、参加者の多くは、口コミでこのイベントの情報を得ていることが明らかになった。このことは、本イベントがかなり定着しつつあることを示唆している。フィールド研の社会貢献という面から、本イベントは重要なものであり、今後もぜひ継続していきたいと考えている。
 継続のためには資金的な裏づけが必要である。最後になってしまったが、今回のイベントにおいても、村田製作所から多額の資金援助を頂戴した。この場を借りて深く感謝申し上げる。

ニュースレター10号 2007年3月 ニュース