センター長 教授 柴田 昌三
少人数セミナー「木造校舎を造る:木の文化再生へ」は2012年度は定員いっぱいの10名の履修登録者を迎えることができた。登録者はすべて1回生で、所属学部の内訳は、総合人間学部1名、法学部1名、経済学部2名、医学部1名、工学部4名、農学部1名(男子9名、女子1名)であった。女子学生の比率がこれほど低いことは初めてのことである。また、留学生が一人含まれていたこともまれな例であった。いずれの学生も出席率は高く、大変、真面目に講義を受けてくれたことも印象的であった。今年度の少人数セミナーを担当したのは、例年通り、地球環境学堂の小林正美教授、小林広英准教授と落合千帆助教及び柴田であった。小林教授と小林准教授には、京都大学が知的財産権を有し、耐震性に優れた木造構造物である京大フレーム工法に関する講義や日本の木造建築物に関する講義、海外で模索されている木質資源を用いた農村計画の紹介等をしていただいた。柴田は、日本の森林に関する総論的な知識を伝えたほか、木質資源を供給する人工林や里山等の現状を紹介した。柴田の学内における講義は、京大北部キャンパスのフィールド研北白川試験地内に所在する、京大フレーム工法によって学内で最初に建てられた実験的構造物である建物と地球環境学堂の講義室を使って行った。これらの講義に加えて、学外での実習も二回行った。一つは京都府立植物園の見学であり、もう一つはフィールド研上賀茂試験地における伐木・製材体験である。昨年度は上賀茂試験地での実習は悪天候のため中止とせざるを得なかったが、今年度は無事に開催することができたことは何よりであった。植物園では木本を中心とするさまざまな植物種を学び、その高い多様性と豊富さを学ぶ一方、木造建築物を考える上で重要な有用樹種について、簡単な情報を学んだ。上賀茂試験地においては、学生のすべてが木の伐採を初めてみるものであったため、非常に興味深く見学し、自らもチェーンソーを握っていた。これらの実習は従来の一コマの時間では行い得ないため、午後半日を用いて行わざるを得ない。そのため、過密な受講スケジュールを組んでいる学生たちの中には参加できない者もいた。このことは残念なことであるが、現状のカリキュラムのシステムの中では致し方のないことである。なお、本少人数セミナーは、次年度以降、少し内容に変更を加え、「木文化再生」をメインのキーワードにし、森と都市の繋がりを重視した講義内容にする予定である。