東北復興支援学生ボランティア

森林育成学分野 教授 德地 直子

  2011年3月の東日本大震災に対して,京都大学では年に2回,それぞれ約1週間の学生ボランティアを派遣してきた。2012年度,2013年度にも第3回2012年9月23~27日,第4回2013年3月17~22日,第5回2013年9月23~28日,第6回2014年3月17~22日に派遣が行われ,フィールド研は東北に主たる拠点を持たない京都大学を代表して,その業務を任されてきた。震災直後はまだがれきの残る中での活動であったために,主にがれき処理など労働ボランティアを行った。その後,松本紘総長からの“京都大学学生らしいボランティアを”という希望があったことや,現地でハード面での復興が少しずつ行われたことから,ソフト面での活動に主体が移っていった。
 中でも京大生らしいものとして,第2回(2012年3月)からはじめられた,気仙沼高校での教育支援がある。これは,ボランティアに応募した学生たちが,自分たちで役に立つことを考え,気仙沼市内にある気仙沼高校に学習支援などを働きかけてはじまったものである。高校の先生方からは,気仙沼市内には大学がないため,どのように進路を決定したか,大学ではどのようなことを学んでいるのか,などを聞かせてほしいという希望をいただいた。そこで,学生たちは高校時代にどのように考え,どう勉強して,大学に進学したか,また,現在の研究内容や生活,夢などを,高校生にポスターやプレゼン,個別の茶話会を通じて伝えている。学生たちからの自発的な提案によってはじめられた“気高-京大通信”という壁新聞も季節ごとに気仙沼高校に送られ,年末の京都への修学旅行のための情報や高校生活の折々のチェックポイントなどが楽しまれているようである。
 また,第3回からは地元での聞き取りも行った。第3回では復興商店街南町紫市場,第4回では市役所,第5回は仮設住宅の馬場国昭さん,第6回は第5回に非常に感銘を受けた馬場さんに再度お話を伺い,また東京から支援に来て移住してしまった加藤拓馬さんから貴重なお話を伺うことができた。遠い京都から何かをしに行く,ということはもちろん大切なのだが,ボランティアに行く大切な目的のひとつに,東北のことを一緒に考える,そして,東北で見たこと体験したことを京都や東北から遠い友人知人に知らせる,ということがある。わずかではあるが,東北のみなさんは今何を考えておられるのか,聞き取りを通じて,学生たちは感じていたと思う。
 年に2回とはいえ,所帯の小さいフィールド研にはなかなか厳しい事業ではあるが,訪問を喜んでくださる気仙沼の方々や,自ら再度東北を訪れるボランティア学生を見ると,活動が学生たちの力になっていることが実感できる。
 最後にいつも暖かく迎えてくださる気仙沼の方々,水山養殖場の皆様にお礼を申し上げます。

これまでの開催記録はこちら

年報11号