ポケゼミ報告2010「環境と魚の河口域生態学入門」

里海生態保全学分野 山下 洋 教授


 ポケゼミ「環境と魚の河口域生態学入門」の受講生は、工学部工業化学科1名、農学部地域環境学科2名、経済学部経済経営学科1名の計4名であった。2010年5月に講義を行い、6月に2泊3日で舞鶴水産実験所において実習を実施した。
 講義では、フィールド研と舞鶴水産実験所の紹介、河川・河口域の構造と環境変動の特徴、通し回遊生物の生態、河口域における魚類を中心とした生物生産構造、実習を行う由良川の環境や魚類相の特徴などを概説した。
 6月18日(金)~20日(日)に由良川河口域において実習を行った。調査は河口から約15km上流の地点から河口の神崎海岸までの区間で、川の様子や流域の構造を観察し環境測定(水温、塩分、溶存酸素、電気伝導度、酸化還元電位、pH)を行った。八雲橋の上流、神崎浜河口側、神崎浜沿岸側の3カ所において小型稚魚まき網を用いた幼稚魚採集調査を行った。八雲橋のやや上流のポイントでは、ゴクラクハゼ、ウキゴリ属、スズキ、神崎浜の河口川側では、スズキ、ボラ、マハゼ、ヒイラギ、海側ではヒラメ、スズキ、マダイ、ヒメハゼが採集された。フィールド調査の後、標本を舞鶴水産実験所に持ち帰り、環境データの分析、魚類の同定方法、魚類の解剖、胃内容物の査定、耳石による年齢査定などについて実習した。また、夜には舞鶴水産実験所内で実験所所属の大学院生とともに、実習で採集した魚類、水産実験所周辺などで採集された魚類などを材料に、実習生にも役割分担して夕食を作った。ここでも、魚のさばき方などを大学院生が指導した。さらに20日には舞鶴魚市場を見学し、マダイ、ヒラメ、ブリ、サワラ、多くの沿岸魚に加えて、この日はバショウカジキがたくさん水揚げされていたのが特徴的であった。
 本実習を通して、実習参加者は多様な観点から自然環境や魚類などの水圏生物に触れる機会を得ることができたのではないかと考えている。