徳山試験地長 講師 中島 皇
徳山試験地では2010年から地元周南市との連携事業を開始し,継続している(詳しくはフィールド研2011 年度年報)。このような実績のもと,周南市と京都大学フィールド科学教育研究センターが2012 年9 月27 日に連携を主とした協定を締結する運びとなった。当日は市及び大学の関係者や報道機関の記者が見守るなか,木村健一郎周南市長と柴田昌三センター長が協定書にサインし,調印式は無事終了した。
協定書の主な内容は「地域創造・地域振興および教育・研究の発展を目的として,それぞれの自主性に基づいて,相互の交流・連携を図るもの」で,具体的には以下のような取り決めを交わしている(文中、甲は周南市、乙は京大フィールド研をいう)。
1. 地域社会の発展と人材育成に寄与するため,甲及び乙の協力により,次の事項を実施する。
(1) 森里海連環学を基礎とした地域創造・地域振興に関すること
(2) 環境問題の解決に貢献し得る専門的な知識を備えた人材の育成
(3) 自然や環境の保全に関する地域に根ざした教育の振興
(4) 森林域,里域,沿岸海域における生物圏情報の発信による地域連携の推進
(5) その他協定の目的に資すること
詳しくは,協定書および取り決めを参照頂きたい。
今後両者の協力態勢が充実し,ますますの交流が推進され,周南市の「森里海連環都市」宣言に発展することを望んでいる。
一方,2008 年に文化庁の「ふるさと文化財の森(檜皮)」に選定(フィールド研ニュースレターNo.14 参照)された檜皮林はそれを遡ること11 年,1997 年に全国大学演習林協議会メンバーの主要大学を中心に共同研究「大径材及び高品位材の供給に関する研究(文化庁科研)」を立ち上げて,檜皮採取による剥皮が樹木の成長に及ぼす影響を調べようとする試みが始めらた。徳山試験地では1998 年1 月に予備調査,2 月に調査木の設定がなされた(演習林試験研究年報1997)。
設定後5 年,10 年,15 年に剥皮木と無剥皮木を伐倒し,樹幹解析を行って剥皮の影響を調べる調査が継続され,2013年1 月が最終調査のための伐倒になった。これまでの調査結果では剥皮によると考えられる樹木の成長に及ぼす顕著な影響は認められていない。解析は継続中で,今後最終結果が出るのが楽しみである。
年報10号 2013年12月 p.9