森里海連環学国際シンポジウム「Integrated Ecosystem Management from Hill to Ocean」

森里海連環学教育ユニット 長谷川路子


 2013年11月26日~28日に、京都大学芝蘭会館稲盛ホールで、国際シンポジウム「Integrated Ecosystem Management from Hill to Ocean(森里海の統合的生態系管理)」を開催しました。このシンポジウムは、フィールド研の創立10周年を記念するとともに、森里海連環学教育ユニットの始動を国際的に知ってもらうため、開かれたものです。日本国内からはもちろん、韓国、ベトナム、フィリピン、バングラデシュ、リトアニア、ウクライナ、フランス、イギリス、カナダ、アメリカ合衆国、ブラジルなどを含む全19か国から、188名の参加がありました。
 初日13時に、山下洋ユニット長の開会挨拶で始まり、Session1.Connectivity between ecosystem and its disruption が行われました。ブリティッシュコロンビア大学のJohn S. Richardson 教授による基調講演‘Why we need to protect the forest-stream connection to ensure water security and ecosystem services’ の後、8題の口頭発表が行われ、フロアーからの発言も活発で、質疑応答の時間はあっという間に過ぎてしまいました。17時からは、稲盛ホール前ロビーでのポスター発表に移り、全部で73題の発表が行われ、随所で熱い議論が交わされました。森里海連環学教育プログラムからも7人の履修生が、日頃の研究成果をポスター発表で披露しました。18時からは、山内ホールで、フィールド研創立10周年の祝賀会も兼ねたバンケット(懇親会)を行いました。
 翌27日は9時から、Session2.Human impacts on watersheds and coastal ecosystems が始まり、北海道大学の白岩孝行准教授による基調講演‘Giant fishbreeding forest : a new environmental system linking continental watershed with open water’ の後、7題の口頭発表が行われました。昼食と2度目のポスター発表を挟み、14時から、Session3.Solutions for functioning ecosystems : anagement for maintain connectivity in human landscapesに移りました。ブレスト大学のDenis Bailly 教授による基調講演‘An economist perspective on blue growth and conservation in the coastal zone’の後、11題の口頭発表が行われました。そして、19時過ぎ、吉岡崇仁フィールド研ンター長の総括で、幕を下ろしました。
 2日間で、口頭発表とポスター発表を合わせ101題の発表が行われ、改めて、森里海連環学の幅広さを実感させられました。個々の発表は事例的な研究が多かったのですが、事例研究を積み重ねるとともに、これらの研究を相互関係に基づいて整理し、近い将来、体系的な森里海連環学としてまとめられることを期待しています。そして、多くの国々から参加いただいたことは、森里海連環学の研究をする仲間が世界中にいること、日本だけでなく世界各地で森里海連環学が必要とされていることを物語っているのだと思います。参加者の方から、「2年に1回、開催してほしい」、「森里海連環学の国際組織を作ってほしい」などのご希望をいただき、嬉しい限りです。
 最終日の28日は、エクスカーション(視察)を行い、海外からの参加者を中心に約20名が参加してくださいました。紅葉真っ盛りの中、哲学者・西田幾多郎が思索にふけった「哲学の道」を、銀閣寺から南禅寺まで下りました。モミジの少しオレンジがかった赤や少し黒みがかった濃い赤、イチョウの黄色などが、きれいなコントラストを描いていました。参加者は、和気あいあいと会話をしたり、立ち止まって写真を撮ったり、さぞ貴重な思い出を作られたことでしょう。
 ご参加くださった皆さま、誠にありがとうございました。

ニュースレター32号 2014年2月