少人数セミナー「海岸生物の生活史」

「生命の星,地球の動物たちの一生から全生物の現在・過去・未来に思いを:少人数セミナー「海岸生物の生活史」より」の開催

海洋生物系統分類学分野 久保田 信

新緑萌えいで太陽キララなGW恒例実施のセミナーを10名参加、自然豊かな和歌山県白浜町で5日間実施。瀬戸臨海実験所周辺の磯浜海岸や漁港でフィールドワーク中心に、地元産動物を飼育展示した水族館も活用し、固定標本・オリジナルビデオ・DVD/CDも駆使。動物の形態・行動の観察・スケッチ等を通し、各々いかなる特性ありか「宝の海から」等の参考書で調べまとめる。ベントスとプランクトン採取で想像絶する親子関係を確認。「地球の住民たち,動物篇」で現地球に生きる144万動物種の門ランクへのまとめを視聴覚フルに使って学習。動物中の最神秘種、生活史を繰り返し逆転できるベニクラゲの若返り奇跡を「ベニクラゲ音頭」・「スカーレットメジューサ1,2」でも紹介し、5億6千万年前も太古の祖先動物「エデイアカラのクリ-チャ-」紹介と森・里・海の生命体相互の営みで息づいてきた歴史と未来への夢を託す「生命の星」で心に訴える。
多様動物群を現場で実地体験する有効性はもとより、専攻の異なる者同志が寝食共にし、整った設備と廉価な宿泊施設で親交も深めた。一部だが受講生の感想は「自然を身で感じる事の素晴らしさ、風や日光や海水の冷たさを体で受けとめ、生物の尊さを教えてくれる物は何よりも自然そのものと交わる時間や経験で、好きになった事を基に新しい事を次へと活かしてゆく理想の学習スタイルで、いつか自分の好きな物が見つかる気がした」「図鑑でしか見たことなかった色々な動物を見つけ、存在も知らなかった生物、様々な動物の歌、人々、かけがえのない経験になり、素晴らしい体験ができ、GWをつぶしてもとる価値あり、後輩たちにも是非勧めたい」「種同定の大変さをつくづく感じた。初めて見る生物だらけでじっくり見つめて観察していると時が経つのも忘れた。生物は実に本当に奥が深い」。以上の感想は本セミナーがやりがいあったという事で嬉しい。
受講生へ贈ったメッセージは「微小幼生から大型成体まで海産動物の多彩な顔ぶれに現場で出会い触れ、ラボや水族館でも観察・実験等が多少できた。この方面の深い知見を得るにはいくら時間があっても足らない。なぜなら生命の母なる宝の海には既知・未知生物が無数に多様に時空的に変化しあい、お互い影響しあいつつ存続してきているから。現生144万動物種が41門に分類できる基礎を心得、動物門ごとに綱以下最小ランクの種・亜種まで留意し、今後の人生で地球同朋体の一生、卵から成体へ成長し子孫残し死に、連綿と続く「生活史」を常に頭におき、懸命に生きる種・地域個体群・地球全生命体の現在・過去・未来に思いを十二分に寄せよ。食物網中で現存できる“厳かさ”を噛締め、個々の生物を慈しみ愛せ。助け合える人に誕生できた幸せを肝に銘じよ。海洋生物中に興味湧きあがる1種を見つけ、その生活史を究明し、隣人に語る希望が芽生えれば本実習参加の意義あり。

ニュースレター14号 2008年7月 教育ノート