有棘動物の分類に関する国際ワークショップ

白山 義久(瀬戸臨海実験所)


 沿岸生物の多様性に関する国際プロジェクトNaGISA(Natural Geography In Shore Area)では、日本財団から助成を受けて、有棘動物の分類に関する国際ワークショップを平成19年3月12日から3月17日まで、京都大学フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所において実施した。
 講師陣はスペインのProf. Fernando PARDOS 、デンマークのProf. Reinhardt Møbjerg KRISTENSEN, Dr. Martin Vinther SØRENSEN および 嶋永 元裕 准教授(熊本大学)と白山、またTAとしてデンマークからIben Heiner 氏が参加した。受講者は全14名で、内訳はデンマーク、インドネシア、タイが各1、日本、マレーシアが各2、フィリピンが3、ベトナムが4名であった。
 3月12日には全員が集合し、翌日は開会式の後、海外の講師3名が午前中有棘動物の分類と生態について講義を行った。午後は記念撮影の後、白山が有棘動物の研究に必須のアーウィンのループの作成方法と、堆積物から生物を濃縮する技術を解説した。その後各参加者は、自ら濃縮をした試料から有棘動物を分離し、グリセリン透徹作業を行った。14日午前中には、前日の試料から光学顕微鏡プレパラートを作成し、午後は、配布した文献を利用して各自が試料の分類同定を試みた。15日午前も同様の作業を継続し、午後には最新の研究成果を、Ms. HeinerとProf. Pardosが発表した。そして最終日午前に各自が分類同定の結果を発表し、講師から講評を受け、午後に参加証の授与を行い、お別れ会を行って解散した。
 参加者は非常に熱心に分類同定技術の習得に努めたことが印象的であった。また講師陣はほとんど機会のない西部太平洋の試料を観察する機会を得て、非常に熱心にサンプルの研究を行っていたので、その情熱が参加者にも伝わって、どの参加者も研究者のひたむきさも学んだものと思われる。このような機会を増やすことによって、東南アジア各国でも海洋生物の分類学が根付いて行くことを期待したい。

ニュースレター11号 2007年7月 研究ノート