北海道大学,京都大学,琉球大学連携フィールド科学シンポジウム

里海生態保全学分野 山下 洋


 国立大学の多くでフィールド関連施設がフィールドセンターとして組織統合されつつある。北海道大学北方生物圏フィールド科学センター,京都大学フィールド科学教育研究センター,琉球大学熱帯生物圏研究センターは,いずれも学部を越えた全学共同利用教育研究施設として発足しており,それぞれが亜寒帯域,温帯域,亜熱帯域に立地していることから,将来の共同研究を視野に入れた3大学連携水圏フィールド科学シンポジウムが平成14年度から始まった。
 15年度は京都大学がシンポジウムをお世話し,12月8日(月)に舞鶴水産実験所において「森と里と海と生物」というテーマで開催された。フィールドセンターは,本来海洋だけでなく森林,耕地,草地などのフィールド施設が統合された組織であることから,陸域と海域の生態系間連環機構をメインテーマとし,シンポジウムの名称からも「水圏」を消す方向で企画を行った。海洋域と森林域から13の講演があり(北大5題,京大5題,琉大3題),学部生,大学院生も含め55名が参加して活発な討論が行われ,午前9時から午後5時半まで,満員の水産実験所講義室は熱気に包まれた。また,3大学の教育と研究の連携に関する討論では,単位互換性を目指したフィールド科学実習の実施について,北大厚岸臨海実験所の協力で平成15年度から始まった,京大フィールド科学教育研究センターの森里海連環学実習の取り組みが紹介された。平成16年度は琉球大学の主催で開催の予定である。

講演プログラム(講演順)
白山義久(京都大学)海洋生物のセンサス調査(個体数調査)(CENSUS OF MARINE LIFE)
中村 將(琉球大学)熱帯性魚類の性分化機構
Ramji K. Bhandari (琉球大学)Development of an appropriate biotechnological method for the conservation of groupers, an endangered fish species inhabiting coral reefs in the tropics
比嘉幹彦(琉球大学)変わり易い魚の性とサンゴ礁
上田 宏(北海道大学)サケをモデルとしたフィールドバイオサイエンス
菜畑優樹(北海道大学)洞爺湖生態系モニタリングおよびエンクロージャー実験
秋田真澄(北海道大学)標津川の蛇行復元がサケの遡上行動に及ぼす影響
芝 正己(京都大学)FSC森林認証制度-森林の新たな価値連鎖創造への挑戦
中西麻美(京都大学)上賀茂試験地における里山生態系の保全に向けて
中島 皇(京都大学)天然林流域からの流出物
上野正博(京都大学)舞鶴湾の遡及的研究
柴田英昭(北海道大学)森林・河川・沿岸生態系の環境変化と水棲生物群集の応答
向井 宏(北海道大学)森と海の相互作用

4 ltr yamasita(3daisinpo)

ニュースレター1号 2004年 2月 ニュース