研究フィールド紹介 里域ステーション 上賀茂試験地

上賀茂試験地長 中島 皇


沿革
 本試験地は1926年に大阪営林署から国有林の一部(現京都ゴルフ場)を買収し、京都帝国大学農学部附属演習林上賀茂試験地として設置された。1949年には進駐軍による接収に伴い、現在地に移転した。以後、隣接地の購入・所管換えや改組を経て現在に至っている。

地理
 大学キャンパスから北北西へ約5km、京都盆地の北に広がる標高200mほどの丘陵に位置する。地質は古生層を主とした砂岩・粘板岩からなり、土壌は浅く、酸性で養分は乏しい。年平均気温は14.6℃、年降水量は1,582mmである。面積は47.0ha、そのうちヒノキ・アカマツに広葉樹が混交した天然生林が65%、外国産樹種を主とした人工林が28%、その他は見本園、苗畑、建物敷等である。天然生林はかつてアカマツ林であったが、1970年代以降にマツ枯れの被害が拡大し、現在では樹齢100年前後のヒノキが優占した林となっている。広葉樹はコナラ、ソヨゴ、ヒサカキ、モチツツジなどがある。

教育・研究・社会教育
 森林科学科新入生ガイダンス、森林科学実習、森林総合実習及び実習法、樹木の超微形態観察及び観察法、土壌物理学・水環境工学実験(農学部)、生物学実習(理学部)などの多くの実習や卒業論文(課題研究)・修士論文・博士論文作成、教員の長期的な研究が行われ、京都大学はもとより、他大学、他機関からも実習・研究フィールドとして広く活
用されている。
 かつての主要な研究課題は外国産樹種の導入と育成で、多くの樹種が世界100以上の植物研究機関との種子交換で集められ、現在800種以上が生育している。マツ科80種、タケ亜科70種、ツツジ科80種のコレクションは、貴重なものとなっている。日本に初めて贈られたメタセコイアや世界で一番高くなる木:レッドウッド(センペルセコイア)の林が見本園にある。最近は長期モニタリングを基本に、里山及び都市近郊林の研究が始められている。
 数年前より試験地の森林や研究成果およびコレクションをより多くの人々に知ってもらうために、自然観察会・炭焼き体験会・シニアキャンパスの受け入れなどの行事やプログラムを実施し、社会に開かれた教育研究施設を目指した活動を行っている。

ニュースレター7号 2006年3月