新人紹介 小林 志保

海洋生物環境学分野 助教 小林 志保

 フィールド調査に魅力を感じ、京都大学農学部に入学しました。現在は、河口域・沿岸海域における物質循環と生態系に関する次のような研究を行なっています。

(1)浅い海の生態系に関する研究-1(藻場)
 アマモ場の消滅は各地で多数の例がありますが、一方で地下水が海底から湧出している場所ではアマモ場が維持されている事例が見られます。物理・化学的手法を用いて地下水湧出量の場所的違いを調べ、アマモ場への影響を解明しようとしています。

(2)浅い海の生態系に関する研究-2(二枚貝)
 二枚貝の漁獲量の減少は全国各地で起きています。現場観測・実験・数値シミュレーションの手法を用いて、温暖化や陸域環境の変化が浅い海の生態系に及ぼす影響を解明しようとしています。

(3)沿岸海域における物質循環に関する研究-1(溶存有機炭素(DOC))
 大阪湾をはじめとする太平洋側の内湾では、陸域負荷削減が進められてきたにも拘わらず貧酸素化が解消していない部分が残されています。溶存有機物が酸素消費に大きく寄与している場所があることがわかってきたので、その生成・分解特性を調べています。

(4)沿岸海域における物質循環に関する研究-2(溶存有機窒素(DON))
 瀬戸内海ではノリ養殖が重要な産業になっていますが、近年栄養塩(DIN)不足が深刻になっています。貧酸素化などの富栄養化問題が解消しない一方で、貧栄養化が起きる矛盾がどのように生じているのか調べています。河川から海の間で全窒素に対する割合が急激に増加する溶存有機窒素(DON)の挙動がカギを握っていると考えられるので、その生成機構について調べています。

 陸域負荷が削減されても生態系が回復しない問題の背景には、河口域・海岸付近における溶存有機物の大規模な生成があり、その背景には植物プランクトンの大規模な増殖があり、さらにその背景には岸近くの藻場や二枚貝の減少があるのではないかと思っています。また里海の生態系の回復のためには、地域の漁業の維持・発展が重要だと感じています。フィールド研所属となったこの機会に、地域の問題とその解決策に関して理解を深めていければと思っております。よろしくお願いいたします。

ニュースレター30号 2013年8月 新人紹介