第22 回公開講座

里山資源保全学分野 助教 中西 麻美

 第22 回フィールド研公開講座を7 月27~29 日の日程で芦生研究林にて開催した。受講生は37 名で,中学生から80代までの幅広い年代であった。今回の応募者は54 名で数年ぶりに定員を上回った。シニアのリピーターが多かったが,中・高校生の若い世代の応募もあった。
 今回は,本講座が開催される前の5 月に研究林内の下谷の一流域で木文化プロジェクトによる間伐が実施されたことを機に,「森を伐る」をテーマとした。「森を伐る」意味を受講生に考えてもらうため,森林資源の利用の変遷から,今後,森を伐ることにより期待される効果,伐ることによる流域環境への影響,という内容で,長谷川准教授,坂野上助教,德地准教授による講義を行った。初日の講義は,本学のOCW(オープンコースウェア)に提供するため,講義の様子を撮影した(既に公開されている)。
 2 日目の林内での実習では,初日の最後に平井技術職員による「樹木の識別入門」で習ったことを復習してもらいながらの樹木の同定,森林生態系の観察,植生に及ぼすシカ食害の影響を説明しながら,午前中に上谷流域を歩いた。午後は,三国峠コース,木を測るコース,長治谷ぶらつきコースに分かれての実習を行った。また,本講座のテーマの「森を伐る」現場である,間伐施業が実施された人工林の見学も行った。
 最終日の3 日目には,由良川沿いのトロッコ軌道を歩きながら,集落跡地で中島講師から当時の集落や研究林を取り巻く状況などについて説明があり,かつて研究林が「森を伐る」現場であったことに触れた。最後に,上賀茂試験地産のヒノキ材で作った,フィールド研のマーク入りのコースターを受講生にお土産として配布した。希望者には,コースターにクマの焼印を押して楽しんでいただいた。閉講後の昼食には,芦生山の家の特別メニューである地元産シカ肉を使ったカレーを食した。
 3 日間とも雨の心配は全くいらなかったが,とても暑かった。特に,初日の講義は,暗幕を使うため風通しが悪く,扇風機だけでは対処しきれず,時折トタン屋根に水をかけても効果はほとんど感じられず,相当な暑さの中で行われた。しかし,受講生は暑さに耐えて講義をしっかり聞いてくれていた。
 例年,テキストに含めていた,樹木の識別方法の部分は,林内で手軽に見て使えるようにと,別冊のポケットガイドとした。チラシ,ポスター,テキストもすべて自作した。本講座のテーマとともにポスターのデザインもインパクトのあるものができた。受講生へのお土産としたヒノキ材のコースターの作成には,上賀茂試験地の藤井技術班長はじめ試験地の職員諸氏に協力いただいた。研究協力掛,佐藤技術長をはじめ,関係各位に深く感謝申し上げたい。
 本講座は,全日本空輸株式会社の協賛をいただくとともに,林内等での受講生の移動のためのマイクロバスを提供していただいた。ここに記してお礼申し上げる。

年報10号  2013年11月 p.7

(参考)イベント案内ページ