畠島全島調査

基礎海洋生物学分野 助教 中野 智之

 2013年4月26~28日の3日間にかけて,畠島全島調査および南岸調査を実施した。26日夕方に瀬戸臨海実験所の講義室に集合し,参加者の顔合わせと調査方法の説明をし,27~28日に畠島にて調査を行った。京都大学瀬戸臨海実験所のメンバーを中心に,奈良女子大学,高知大学,和歌山大学,同志社大学,大阪芸術大短期大学部,大阪市立自然史博物館などから27名が参加した。
 畠島は,田辺湾の南側ほぼ中央部に位置する京都大学所有の無人島(26,529m2)である。「海岸生物群集一世紀間調査」と題して,1968年の国による島の買取り直後から,海岸生物相のモニタリングが始まり,5年に1度のペースで,現在まで約半世紀もの間,継続してきた。全島調査では,潮間帯を基準にして,島を43区画に分け,軟体動物(主に貝類)や節足動物(カニやフジツボ),棘皮動物(ヒトデやウニ),刺胞動物(主にイソギンチャク),環形動物(ゴカイ類)などの86種類を対象に,区画ごとの分布や密度を記録している。具体的には,田辺湾の一般的な生き物であるムラサキウニやツマジロナガウニ,ヒザラガイ,イシダタミ,イガイ類,ツバサゴカイに加え,南方系のタイワンクロフジツボなどを調べた。さらに富栄養化の指標となる生物種も対象にしている。また南岸調査では,畠島南岸域を16区画に分け,観察された全ての動植物を記録している。このようにして得たデータを過去のデータと比較分析することで,畠島の海岸生物相の経時的な変化を観察し,環境の長期変動を海岸生物相から明らかにすることを目的としている。特に,このような長期的な調査は世界的にも珍しく,地球温暖化の影響などを考える上で重要なデータにもなり,注目を集めている。
 今回の調査は天候にも恵まれ,参加者の皆様の御協力のおかげで,大変楽しく,滞りなく行うことができた。この場をお借りして改めて御礼申し上げる。この畠島全島調査は,単なる学術的な調査としてだけでなく,瀬戸臨海実験所OBや縁のある研究者の同窓会,ベテラン教員,研究者から若い研究者や学生への知識や経験の伝授の場として,非常に有意義な調査となっている。次回の調査は記念すべき50年目の調査で,2018年春の開催予定である。興味のある方はふるってご参加ください。

年報11号