新人紹介 甲斐 嘉晃

里域生態系部門里海生態保全学分野  甲斐 嘉晃


 今年3月に本学農学研究科を卒業し,4月1日にフィールド科学教育研究センター舞鶴水産実験所に助手として着任致しました.早いもので,すでに4ヶ月が過ぎ,日本海に面したここ舞鶴にもずいぶん暑い夏がやってきました.大阪に生まれ,神戸で育ち,学生時代は京都市内と,それなりの「都会」に暮らしてきた私としては,就職というと満員電車に揺られビル風に吹かれながら出勤するというイメージがありました.しかし,舞鶴では,毎日自転車で海風に吹かれながら出勤するという,イメージとはずいぶんかけ離れた生活を送っております.
 専門は魚類の系統学・分類学で,学生時代はメバル属魚類を対象に研究を行っておりました.メバル属の代表的な種,メバルは「春告魚」とも呼ばれ,春に多く漁獲されるポピュラーな魚です.ところが,体色に変異が見られ,これらが同種内の変異なのか,別種の関係にあるのか,昔から議論を呼んでいました.このように水産業上重要な魚種の分類がきちんとされていないと,正確な資源管理や資源保護に支障をきたす可能性があります.そこで,それぞれの体色ごとに形態学的,遺伝学的に詳しく調査を行ったところ.これらが遺伝的に混じり合っていない「別種」の関係にあるということを明らかにできました.メバル属には,このように体色に変異が見られるために分類が混乱しているグループが多く,今後の研究の課題であろうと考えております.
 舞鶴水産実験所には,日本の魚類分類学の基礎を築いた故松原喜代松教授の時代から蓄積された魚類標本が多く保管されています.その数は30万点を超え,世界的に見ても豊富なコレクションを有しています.その中には,種の基準となるタイプ標本も多く含まれているだけでなく,なかなか採集できない種や,今では絶滅してしまった種も含まれており,どれも貴重なものばかりです.これらの標本の維持・管理も重要な任務であると考えております.現在,世界の博物館や大学施設に保管されている標本のデータベース化が進んでおり,舞鶴水産実験所の貴重な標本も世界レベルで有効に利用できるようデータベース化を急いでいるところです.
 社会人になってまだ4ヶ月,「未熟者」を絵に描いたような未熟者で,まわりの方々にはご迷惑をかけてばかりですが,若さだけを強みに,教育・研究に努力していくつもりです.これからも,ご指導,ご鞭撻を賜りますよう,よろしくお願いいたします.

ニュースレター2号 2004年11月 新人紹介