スタッフ紹介(教育研究部)

注 この情報は、ニュースレター1号 2004年 2月 掲載のものであり、現在の教職員については、こちらを参照ください。

森林生物圏部門
森林生態保全学分野

大畠 誠一(おおはた せいいち)、教授
 専門は森林生態保全学。多種の樹木からなる天然林および同種からなる人工林内で発生している事象を、「科学的に理解された点と点を繋ぐことで、総合的に理解できる」と思いがちです。しかし、それらの実態の多くは不明のままです。このために、森林内で発生する諸問題の予測や人間による資源利用の計画も困難な場合が多くなっています。そこで、生物やミネラル循環を介しての森林の動態等、生態学的な基礎研究をもとにして、日本の森林の理解を深め、流域から海までの相互理解に繋げていきたいと考えています。

森林生物圏部門
森林生態保全学分野

德地 直子(とくち なおこ)、助教授
 専門は森林生態系生態学。近年、森林生態系には木材生産のみならず環境創造機能など多面的な価値の発揮が期待されています。しかし、どのような機構で水源涵養を含む環境創造が生じるのかに関しては明らかになっていない部分がたくさんあります。これら森林生態系のもつ機能を定量的に評価するため、物質循環の手法を用いて解析を行なっています。また、従来注目されてこなかった森-里-海といった生態系の連鎖による機能を把握し、大きく変わりつつある生態系を正確に記述・解析することが急務であると考えています。

森林生物圏部門
森林生態保全学分野

嵜元 道徳(さきもと みちのり)、助手
 専門は森林保全生態学・樹木行動形態学。原生的な森林(芦生のスギ・落葉広葉樹林、阿寒国立公園のアカエゾマツ林、和歌山のモミ・ツガ林)において、樹木種の生活史の中で重要となる生育段階に注目し個体群統計学的なアプローチによって植生構造の形成・維持機構や高木種の再生・維持機構の解明を進めています。また樹木種が有するモジュール性に注目し、その多様性と時・空間的な可塑性発達に関する研究も進めています。現在、高さ20m以上に達する高木に登り林冠生態研究も展開中。

森林生物圏部門
森林資源管理学分野

竹内 典之(たけうち みちゆき)、教授
 専門は森林資源管理学。近年、管理圧の低下から劣化の著しい人工林・二次林を対象とする森林資源の持続的な管理理論の構築と管理技術の開発に向けた調査・研究を進めています。特に、スギ・ヒノキを主とする針葉樹人工林の超長伐期施業、複層林化、針広混交林化に向けた密度管理技術体系の確立と広葉樹林育成技術の開発を当面の課題としています。また、里の在りようがどのように森林を改変してきたのか、改変していくのかを明らかにしていきたいと考えています。

森林生物圏部門
森林資源管理学分野

安藤 信(あんどう まこと)、助教授
 専門は森林資源管理学。研究テーマは森林の更新と動態。樹木生理・養分動態や森林・樹木の環境変化に対する応答に関しても興味があります。天然林・二次林を形成する高木層の経時的変化は小さいのが一般的です。主に京都府下の芦生研究林、八丁平湿原周辺林、京都市周辺都市林、和歌山・白浜の海岸林や、亜高山帯の南アルプスをフィールドに長期追跡調査を行っています。近年、人間生活と関係が深い京都の都市景観の回復や、内蒙古やトルコの乾燥地・半乾燥地の沙漠化、温暖化による森林の衰退、植生の変化についても他研究機関と共同研究を開始しました

森林生物圏部門
森林資源管理学分野

坂野上 なお(さかのうえ なお)、助手
 専門は林業経済学・木材流通論および消費論。森林・林業・木材に関連する社会的・経済的事象を対象に、森林と人間社会および地域社会との関連を研究しています。 研究テーマは、 (1)木材流通システムと住宅生産システムとの関連(2)地域の木材を利用した住宅の生産供給システムの展開(3)森林・木材・木造住宅に対する消費者の意識。森里海連関学において、歴史的な時間軸も含め、自然環境と人間社会との関わりについての考察は欠かせません。新しいフィールド科学の創設にあたって、社会科学分野からの貢献ができればと考えています。

森林生物圏部門
森林環境情報学分野

芝 正己(しば まさみ)、助教授
専門は森林利用学・林業工学。「持続可能な森林管理SFM」の三位一体の保続概念である「木材資源の持続性」・「森林環境の保全性」・「社会的便益性」を念頭に、「森林の利用と保全のバランスシート」について、①森林空間の機能区分とゾーニング法、②環境低負荷型の森林経営基盤整備システム、③LCI/LCAを導入した生産技術・機械化の体系化、④国際森林認証・ラベリング制度の運用評価、⑤CoCによる木材生産・加工・流通のロジスティクス分析、等を具体的な研究課題として検討しています。

森林生物圏部門
森林環境情報学分野

中島 皇(なかしま ただし)、講師
 専門は砂防学を基とした山地森林流域の森林保全学。現在、幽仙谷集水域天然林研究区をフィールドとして、樹木の成長量・枯死量、流出水量、流出土砂量、流出リター量のデータを集め、短期から長期的な物質移動を明らかにする研究を行っています。森林被害(豪雨・強風・塩風害・雪害・病虫害等)の長期的モニタリングや人間の利用が原生的な自然に与える影響やその自然(森林)が人間に与える影響についての研究を行い、自然に対する人の関わり方に提言が行えるような研究を続けたいと考えています。

里域生態系部門
里山資源保全学分野

西村 和雄(にしむら かずお)、講師

 私の専門分野は固定したものではありません。こだわると自由な仕事が出来にくくなるからです。これまでもマングローブや蓄積植物(必須元素とは限らず特定の元素を特異的に吸収蓄積する植物)と植物分類との関係などやってきました。今いちばんの興味は中国大陸から飛来する黄砂の研究です。黄砂の量やこれに随伴するP・Caなどを調べてます。これに一息つけば里域、いや耕地生態系の全体を捉えるパラダイムの構築を目指そうと思ってます。が、最大の眼目は有機農業です。ただし、「学」にこだわりたくないので学外の活動だけに絞っています。

里域生態系部門
里山資源保全学分野

中西 麻美(なかにし あさみ)、助手
専門は里山資源保全学。かつては里山だった上賀茂試験地は,多様な生物相を有する場所ですが,周辺での開発による環境改変が上賀茂の生物相に及ぼす影響は必至と考えられ,その影響を調べる取組みを始めたところです。6,7年前までマツタケがたくさんとれた京都府北部の故郷の二次林は,今では立ち枯れたアカマツが何かを訴えかけているようにも見えます。管理放棄や環境改変に伴って変わりつつある里山の保全に向けて,広い視野で,かつ様々な角度からの視点を持って取り組もうと考えています。まずは地道に現状を把握することから,というところです。

里域生態系部門
里地生態保全学分野

山河 重弥(やまかわ しげや)、講師
 専門は里域生態保全学。近年,用排水設備の改良による乾田化,農薬の使用や施肥量の増加,大形機械の導入や栽培時期の早期化あるいは秋耕の廃止による耕種方法の変化など水田やそれを取り巻く環境は大きく様変わりしています。この水田域に生育する植物の種類や個々の種の分布状態,生育および繁殖形態およびそれらの変異性について調査しています

里域生態系部門
里地生態保全学分野

梅本 信也(うめもと しんや)、助手
専門は里域生態保全学。現在の研究テーマは、①自然域生態系nature ecosystemからの里域生態系human ecosystemの起源と系譜、②照葉樹林文化圏と黒潮文化圏における里域生物相と里域生育地の進化と保全、③自然保護区における異形要素の管理と同化、です。主な著書に、「雑草の自然史」「紀伊大島きのこガイド2000」「ヒエという植物」「照葉樹林文化論の現代的展開」「雑穀の自然史」「紀州里域植物方言集」「紀伊大島フィールドガイド-自然編-」があります。

里域生態系部門
河口域生態学分野

田中 克(たなか まさる)、教授
専門は魚類初期生態学。陸域と海域の接点に当たる河口域は、多くの海の生き物たち の再生産初期過程に不可欠です。一方、陸域における人間の諸活動の影響を最も強く受ける場所でもあります。わが国では最も大規模な汽水域を形成する有明海筑後川河口域を主要なフィールドに、長期連続データの蓄積と特産種の維持機構としての’大陸沿岸遺存生態系’を陸域(筑後川とその集水域当たる森林域)の関連のもとに解明することを目指しています。

里域生態系部門
河口域生態学分野

田川 正朋(たがわ まさとも)、助教授
 専門は魚類生理学。特に卵から稚魚になるまでのホルモンの役割について研究を行っています。天然で広く見られるため生態学者や漁業・養殖関係者にはなじみ深い現象であっても、体内の仕組みが殆ど判っていない現象は数多くあります。アユやスズキなどの仔稚魚が川から海へ、海から川へと塩分差を克服して生きる仕組みや、ヒラメ・カレイ類の変態にみられる体の左右が違った色・形へと変化する仕組み、あるいは未受精卵中に含まれている母親由来のホルモンの役割などを、現在の研究テーマとしています。

里域生態系部門
河口域生態学分野

中山 耕至(なかやま こうじ)、助手
 専門は魚類分子生態学・系統学。水産動物の資源管理や人為的増殖のための基礎情報として,種内の個体群構造や種間の系統関係をミトコンドリアや核のDNAマーカー等を用いて調べています.種内個体群構造研究については,初期生活史の調査研究と組み合わせることでより精度の高い推定を目指しています.主な対象種はスズキ類やヒラメ,調査水域は有明海や日本海です.水産動物の種多様性,遺伝的多様性の創出・維持機構や,近年の水辺環境改変によるそれらの変動過程にも関心を持っています.

里域生態系部門
里海生態保全学分野

山下 洋(やました よう)、教授
 専門は沿岸資源生態学ですが、これからは森里海連環学にも力を入れます。沿岸資源生態学の中では、とくに、ヒラメ・カレイ類、メバル類、アジ類などの沿岸魚類の初期生態や生残機構の研究、沿岸域成育場の環境と生物生産機構に関する研究、およびそれらを基礎とした栽培漁業技術開発に関する研究を行っています。森里海連環学では、森林域、里域が河川を通して沿岸域の海洋環境、生物多様性、生物生産に及ぼす影響の解明をめざしています。多様な視点から自由な発想で研究を行う大学院生募集中です。

里域生態系部門
沿岸資源管理学分野

益田玲爾(ますだ れいじ)、助教授
 専門は魚類心理学。すなわち魚の行動や生態に関する諸々の疑問を,実験心理学的な手法を駆使して解明してゆく分野に取り組んでいます.たとえば,魚の群れはどのように維持され,そして機能しているか,魚の学習能力はどの程度か,といったテーマです.飼育実験を中心に研究を展開する一方で,フィールドへ出て潜水観察によりデータをとることも多くあります.資源としての海の生物を人類が持続的に利用する上で,何らかの寄与をしていきたいと考えています.

里域生態系部門
沿岸資源管理学分野

上野 正博(うえの まさひろ)、助手

専門は日本海学,水産海洋学,数理生態学,沿岸海洋学。主な研究テーマは以下のようなものですが、
(1)沿岸環境については、舞鶴湾の遡及的研究(下水道整備は里海に何をもたらしたか),潮汐場の弱い内湾における貧酸素水塊形成機構,日本海沿岸の短期海況変動,里海GISの研究を、(2)数理生態学については、採集個体数データの信頼性と代表性の研究を、(3)底棲生物については、日本海底棲生物群集の形成過程,底棲生物のPopulation Explosionの研究を行っています。

基礎海洋生物学部門
海洋生物系統分類学分野

久保田 信(くぼた しん)、助教授

 専門は刺胞動物門ヒドロ虫類の系統分類学。各種の配偶子・幼生から成体までの生活史を、フィールド調査やラボでの飼育・観察・実験室により解明し、生態から分子までのあらゆる生物学的情報を取り入れて種の決定や高次分類群の系統発生・種の起源について究明しています。また、黒潮流域の生物群集の博物学的知見を各種の応用研究への基礎として克明に記録・記載しています。プランクトンネット・ドレッジ・スキンダイビングでの採集調査の他に、森里海連環の足かがりとして漂着物調査や近郊の漁港での目視調査なども実施しています。

基礎海洋生物学部門
海洋生物系統分類学分野

大和 茂之(やまと しげゆき)、助手
 専門は動物分類学・甲殻類学。海産のヨコエビ類・フジツボ類を材料にして、「種」・「性」について調べています。海の動物には、未だに多数の新種が見つかります。これらを形態に基づいて新種として報告するとともに、海の動物における種のあり方について考えています。フジツボ類には、雌雄同体や矮雄などの多様な性が見られます。その発現する要因について調べています。また、身近なフィールドである田辺湾で、この30年間余りで見られた生物相の変遷について、その要因について調べています

基礎海洋生物学部門
海洋生物進化形態学分野

宮崎 勝己(みやざき かつみ)、助手
 専門は動物系統進化学。現生の動物の中で最も多様性に富む節足動物の進化に興味を持ち、節足動物の様々な群について、比較形態・発生学的研究を行っています。現在は、現生の節足動物の中で最もbasalな系統的位置にあるといわれ、節足動物の起源を考える上で鍵となると考えられるウミグモ類を主な研究材料として、分類や生活史等も含めた研究を進めていますが、今後はクマムシや動吻動物といった節足動物と近縁な動物群に対象を広げ、総合生物学としての系統進化学的研究により、節足動物の起源に迫っていきたいと考えています。

基礎海洋生物学部門
海洋生物進化形態学分野

和田 洋(わだ ひろし)、助手

専門は進化生物学。多様な多細胞動物の形態が、どのような遺伝子レベルでの進化によってもたらされたかについて研究しています。現在特に、脊椎動物の起源について焦点を当て、骨細胞や神経堤細胞などの新しい細胞タイプの進化について、遺伝子レベルでの痕跡をホヤやナメクジウオ、ヤツメウナギから見出し、どのような遺伝子の改変が関わっていたかを調べています。また、クモヒトデや軟体動物や中生動物など新しい動物を発生学の対象として開拓していき、動物学的な問題に答えていくことも試みています。

基礎海洋生物学部門
海洋生物多様性保全学分野

白山 義久(しらやま よしひさ)、教授
専門は海洋生物学。主な研究対象は1mm以下32um以上の篩画分に入る小型底生生物(メイオベントス)。従来は主に1)深海メイオベントス群集の生態学的研究;2)小型の動物、特に線形動物(Nematoda)、動吻動物(Kinorhyncha)、胴甲動物(Loricifera) の系統分類学的研究; 3)メイオベントスの、環境指標生物としての応用などを研究してきました。しかし最近は、海洋生物に関わる地球環境問題(特に二酸化炭素問題)に取り組んでいる他、地球規模で沿岸生態系の生物多様性の地域間比較をめざす国際共同研究(NaGISAプロジェクトhttp://www.nagisa.coml.jp/)の研究代表者を務めています

基礎海洋生物学部門
海洋生物多様性保全学分野

田名瀬 英朋(たなせ ひでとも)、助手
専門は海洋生物学。主として和歌山県南部水域の水生動物群を対象にしています。ここ数年は、県下でも生息が確認されはじめたミドリイガイ(二枚貝、外来種)やシオマネキ類(カニ類)、陸水域の淡水海綿などについて生息状況を調査しています。また、ウニ類や貝類の長期年変動については、共同研究者とともに特定地域(畠島など)において調査を続行しています。
 野外調査において採集した一部の動物は、付設の実験水槽室(白浜水族館)において飼育観察をおこなうとともに、臨海実習や学校・社会教育にも供しています。

地球環境学堂・地球親和技術学廊
景観生態保全論分野

フィールド科学教育研究センター
里山資源管理学分野(両任)

柴田 昌三(しばた しょうぞう)、助教授
 専門は里山資源保全学。長年にわたって私たちが共生し、維持してきた里山やそれを取り巻く二次的自然の環境が、かつての管理が行われなくなったことによって荒廃しています。日本全国に拡がっているこのような里山は、今も生物資源を豊富に蓄えており、これをもう一度利用できるようにすることは、環境の重要性が認識されている現在、重要なことです。そのため、管理されなくなった里山を再度管理するための手法の検討、管理された里山が持っている生態系の再評価、竹林の再利用の検討、などを目的とした研究を行っています。

ニュースレター1号 2004年 2月