福西 悠一氏がSally Richardson賞(最優秀口頭発表賞)受賞

2005年7月、第29回 Annual Larval Fish Conferenceにおいて、福西 悠一氏(舞鶴水産実験所・修士2年)がSally Richardson賞(最優秀口頭発表賞)を受賞しました。

 フィールド研舞鶴水産実験所修士2年の福西 悠一君が、このたび第29回国際仔稚魚学会(29th Annual Larval Fish Conference)において、学生対象の最優秀口頭発表賞であるSally Richardson賞を受賞した。同賞については、2年前にも河口域生態学分野修士2年の中山 慎之介君が受賞しており、京大フィールド研から二人目という異例の快挙となった。
 受賞対象となった研究は、Ontogenetic changes of UV-B radiation induced mortality and avoidance behavior against UV-B in red sea bream Pagrus major and black sea bream Acanthopagrus schlegeli. (マダイとクロダイにおける紫外線耐性および紫外線からの逃避行動の個体発生)と題したもので、著者は福西 悠一・益田 玲爾・山下 洋である。卵および仔魚の早期では、マダイとクロダイで紫外線への耐性に差はないこと、クロダイは仔魚期のある時期から紫外線耐性を高め、また稚魚期には紫外線から逃避する能力を身につけることなどを、巧妙な実験により示している。発表内容については、本学会の会長でMarine Ecology Progress Series誌の編集長でもあるHoward Browman博士や、テキサス大学海洋研究所長のLee Fuiman博士からも高い評価が得られた。
 本学会はこれまで欧米豪の各地で催されており、今回のバルセロナ大会への参加者は200名程度であった。受賞の対象となった学生の口頭発表者は22名おり、600ドルの賞金と名誉ある楯を目指して各国の俊英が研究内容を競った。学会参加申し込みの時点では、福西 悠一君の発表はそもそも、いまだ実績のない無名の学生ということでポスター発表に回されていたのを、本人が主催者の教授に打診し、結局、基調講演のあとの一番良い時間帯に配分してもらえた。また、国際学会では初めての発表であり、往路の機内ではもちろん、夕食を食べに行く途中や料理を待つ間も原稿を手に練習していた。今回の受賞は幸運なことには違いないが、この幸運を呼び込むために本人が示してきた努力は並大抵ではない。
 一方で、彼の恵まれた研究環境についても触れておきたい。研究材料としたマダイとクロダイの受精卵は、京都府立栽培漁業センターや愛知県水産試験場の好意により頂いたものである。また舞鶴水産実験所で飼育実験を行い、十分な議論を重ねたのち、京都の河口域生態学分野のゼミで発表練習をし、意見をもらうという、二段階の練習の機会に恵まれたことも、重要な勝因の一つといえる。フィールド研のすぐれた教育・研究環境を活かして、彼に続く学生が次々に現れてくれることを確信する。

(舞鶴水産実験所 助教授 益田 玲爾)