ポケゼミ報告2009「森のつくりだすもの」

森林生態保全学分野 德地 直子 准教授


 森は有形・無形のさまざまなものを私たちにもたらしてくれるが,森の実際の姿や森の作り出す機能の創出のためにどのようなしくみがあるのか,よく知っているとはいえない。このポケゼミ“森のつくりだすもの”は,森に入って,森にふれ,さまざまな森の性質をとらえることを目的としている。
 本実習は,和歌山研究林において夏季休業期間に行われる。和歌山研究林はフィールド研の研究林の中でも集落から離れた自然にめぐまれた地域にあり,また人工林率の高い森林である。そのため,以前は人工林の育成に関する林学教室の実習が行われていた。このような特徴を生かし,自然の森林を体験するだけでなく,現在産業として厳しい状態にある林業についても考えるきっかけとしてもらいたいとカリキュラムを立てている。今年度は特に,森と川のつながりを重視し,和歌山研究林内の河川での魚類の調査も行い,以下のようなスケジュールとなった。

第一日目
研究林を源流のひとつとする有田川の下流地点に集合し,上流に向かって河川水をサンプリング・調査しながら研究林にはいる。
第二日目
和歌山研究林が設置されて以来手付かずで残されている貴重な天然生林とそれをとりまく人工林内を散策し,樹木の識別を通して自然の営みを見つけ,天然林,人工林のそれぞれの特徴を学習する。研究林内の河川において,電気漁具を用いて魚類相とその食性について調査する。森林における森と川のつながりを,川に生息する魚類の採取とその胃内容物から考える。
第三日目
人工林を管理することの重要性を学び,実際に間伐体験を行う。

 今年度は特に,昨年度より和歌山研究林で行われている森と川のつながりに関する研究サイトにおいて,電気漁具での魚のサンプリングを行った。魚を電気漁具で採捕するには特殊な許可が必要であり,通常は行えない実習に学生は大変興奮した様子であった。これから大学で学んでいく学生に森林生態系のしくみや森林とその周囲の生態系,さらには人との関わりについて少し何かを感じてもらえたのではないかと思っている。