ILASセミナー報告2016「瀬戸内に見る森里海連環」

森林情報学分野 講師 中島 皇

 メンバーの顔合わせ,本セミナーの動機付け(森里海連環学や瀬戸内の予備知識,JR徳山駅までのアクセス方法や課題(徳山試験地で発表する瀬戸内地域に関するレポート)のヒントなど)のセミナーを5月,6月に1回ずつ吉田キャンパス北部構内で行い,8月3~6日に徳山試験地で合宿形式ゼミ(3泊4日)を行った。昨年は最終的に参加者0になってしまった。それも教育だと言われれば仕方ないが,理由のハッキリしないドタキャンや本人に責めがあるようなキャンセルは御免蒙りたいものである。現地のフィールドで行われる集中講義の大変さ(手間の多さ)と重要性をわかってくれる人がどれ程いるのだろうか。実習担当者の独り言である。
 参加者は今年も減っていって2人(法1,工1:当初の申し込みは6人)になった。フレッシュな新入生諸君が瀬戸内の恵まれたフィールド(環境:森・里・海)に出て,自ら体験し,自然と人間の関わり方,里の意味を考えることがこのセミナーの目的である。今年は久保田先生が別の実習と重なったために同じ瀨戸臨海実験所(白浜)の大和先生に海の部を担当頂いた。これまで担当頂いた先生は全て瀬戸内出身である。昨年から担当のTA(森林育成学研究室M2)も広島県福山市の出身である。
 集中ゼミは,8月3日(水)15:30にJR徳山駅集合で始まるのであるが,TAと教員で下見と受け入れ準備を兼ねて前日からの徳山入りが恒例である。今年はTAの就職試験(国家公務員試験)が重なって初日まで影響が出たが,1回生にとってはそれも良い刺激になったのではないかと思っている。
 8月4日(木)はTAも揃って万葉の森(周南西緑地公園:旧徳山試験地),末武川の最源流部・烏帽子岳(697m)近くの赤松ヶ平展望台(だいぶん整備され八代盆地がよく見えるようになった),魚切ノ滝,人の暮らしていた跡,豊かな水田風景。八代の親水公園で昼食。河床にはかなり草が茂っていた。午後は温見ダム(下松市の水道水源池)で担当職員の方に説明を頂いた。最後に旧山陽道の側に鎮座する花岡八幡宮の森と杮(こけら)葺きの屋根を持つ多宝塔を見て,山から海までのプログラムの1日目は終了した。
 8月5日(金)昨年に引き続いて近隣の高校生(生物部や理系進学クラス:教員同伴)が随伴する1日になった。午前中は試験地の森林を見学した。特にヒノキ人工林(ふるさと文化財の森(檜皮))では,現在(秋から冬)行われている檜皮採取の現場で説明を受けて,檜皮の束の現物も見た。次に末武川ダムに移動して昨日からのプログラムを再開した。多目的ダムが川の流れを分断することの意味について考えた。中流部の川の観察,海(笠戸湾)では人工干潟の造成地を眺め,磯で生物の観察をした。最後に河口干潟に戻って,全員で干潟に降りて干潟の状況や生物を観察した。
 今年は高大連携も兼ねてILASセミナーを実施したが,京大生の参加者が少なく,折角のチャンスが生かせなかったように思う。次年度からは1回生のみでなく上回生の参加も認め,また欠員が出た場合には追加募集が出来るようにして行きたいと考えている。