ILASセミナー報告2017「瀬戸内に見る森里海連環」

森林情報学分野 講師 中島 皇

 メンバーの顔合わせ,本セミナーの動機付け(森里海連環学や瀬戸内の予備知識,JR徳山駅までのアクセス方法や課題(徳山試験地で発表する瀬戸内地域に関するレポート)のヒントなど)のセミナーを5月,6月に1回ずつ北部キャンパスで行い,8月7日~10日に徳山試験地で合宿形式ゼミ(3泊4日)を行った。
 今年は参加者が多く6名(経1,理1,工2,農2(2):()は女子内数)となった。フレッシュな新入生諸君が瀬戸内の恵まれたフィールド(環境:森・里・海)に出て,自ら体験し,自然と人間の関わり方,里の意味を考えることがこのセミナーの目的である。セミナー実施担当で瀨戸臨海実験所(白浜)の2名の先生のうち,久保田先生は別の実習と重なったために最終日のみ参加。大和先生は全日程参加予定で,特に川から海では生物観察をしっかり行うべく今年はタモ網やバットを準備した。担当TA(森林情報学研究室M2)も広島県尾道市の出身である。
 集中ゼミは,8月7日(月)15:30にJR徳山駅集合で始まるのであるが,TAと教員で直前下見と受け入れ準備をするため,前日からの徳山入りが恒例である。今年は台風5号がノロノロと日本列島を伺い,昨年同様にTAの就職試験(公務員(広島県)試験)が重なった。案の定,紀勢本線が止まり,大和先生は初日と二日目の午後まで欠席。また工学部の2人からは「集合時間に間に合わない。」と連絡が入った。自然の力には勝てないことや自分たちの見通しが甘いことを実感したなら価値がある。
 8月8日(火)は徳山試験地技術班長・境さんに見学のサポートをお願いした。万葉の森(周南西緑地公園:旧徳山試験地),末武川の最源流部・烏帽子岳(697m)近くの赤松ヶ平展望台,途中で車を降りて末武川の源流に沿って下り,魚切ノ滝,人の暮らしていた跡,豊かな水田風景を見ながら下山した。八代の親水公園は生い茂っていた水辺の草は整備されていて,昼食後皆で魚を追いかけていた。さらに下って,盆地の最下流部にある浄化センターを通って,午後は温見ダム(下松市の水道水源池)で担当職員の方に説明を頂いた。最後に旧山陽道の沿線に鎮座する花岡八幡宮の森と(こけら)葺きの屋根を持つ多宝塔を見て,山から海までのプログラムの1日目は終了した。大和先生と就職試験のTAは夜の部から合流である。
 8月9日 (水)は大和先生が担当の川から海への1日であるが,午前中は試験地の森林を見学した。特にヒノキ人工林(ふるさと文化財の森(檜皮))では,檜皮採取の現場で説明を受けた。次に末武川ダム(多目的ダム)の上流に移動して,昨日からのプログラムを再開した。中・下流部の川の観察。各自,網とバットを携えてそれぞれに生物を捜す。最後に全員で河口干潟に降りて干潟の状況を確認したり,多くの生物を採取した。この夜は皆でバーベキューとなった。
 8月10日 (木)は前日から徳山入りして満を持していた久保田先生が,ILASセミナー「瀬戸内に見る森里海連環」用に準備した講義を聞いた。久保田先生は今年度で定年になる。1回生のみでなく上回生の参加も認めたが,新入生の十分な参加があって上回生の参加者はいなかった。参加者の募集はなかなか難しいものである。