100周年を迎える芦生研究林

芦生研究林長 石原 正恵

 芦生研究林は、大正10(1921)年から99年間の地上権契約のもと始まりました。その契約が2020年4月に終了し、新たに30年間の契約を締結することができました。来年2021年4月には100周年を迎えます。

 次の30年間の芦生研究林は「様々な生き物が棲む森、多様な人がともに学ぶ場」を目指しています。近年、アシュウハヤシワラジムシという土壌節足動物の新種が発見され、フガクスズムシソウの生育が北近畿で初めて確認されるなど、改めて芦生研究林の自然の重要性が示されています。また「人と自然のつながりを学ぶ森林フィールド教育共同利用拠点」として北海道研究林・上賀茂試験地とともに文科省に認定され、京都大学だけでなく、全国・海外の大学生に利用されるようになりました。また、年間約4,000の一般市民の方に、ハイキングやガイドツアーを通じ利用されています。さらに、地域との協働を通じた森里海連環学の発展やSDGsに向けた取り組みも進めています。

 こうした芦生研究林の自然と取り組みを紹介する事業を実施しています。2020年8月21~30日に京都府立植物園にて写真展「芦生の天然林と着生植物」を開催し、2,800名を超える方に来場いただきました。また9月10~29日に京都丹波高原国定公園ビジターセンターにて、写真展「大きな森の小さきものたち~活動で見つけた!自然写真展~」を開催し、芦生研究林の自然を紹介すると同時に、研究者、技術職員、ガイドさんの視点で捉えた芦生の自然を紹介しました。2021年3月15日には京都大学百周年時計台記念館にて設立100周年記念式典・シンポジウムを開催予定です。

 芦生研究林基金では100周年記念キャンペーンを実施しています。5,000円以上ご寄付いただいた方には天然アシウスギコースター等の返礼品をお送りしています。このコースターは、2017年の台風により倒れた研究林内の天然のアシウスギの老木と、林内に生育する広葉樹8種(トチノキ、ミズメ、ブナ、ホオノキ、ミズナラ、イタヤカエデ、クリ、ケヤキ)の材を活用しています。アシウスギの老木は樹齢150年以上、直径1.2m もの大きな木でした。次の30年、100年に思いを馳せ、多様な生き物と人の集う芦生研究林をイメージして、教職員がデザインしました。材の搬出から2年以上かけて乾燥させ、1枚1枚、技術職員が手作りしました。

 ご寄付は、ミニ希少植物園、学生宿泊所の改修、若手研究者助成金制度に活用いたします。芦生研究林ではシカの過剰採食により様々な植物が見られなくなってしまいました。林内で消失の危機にある希少な植物を、生育・展示する「ミニ植物園」を新設します。年間約4,000人の学生や研究者が芦生研究林を利用しています。しかし、宿泊所は築60年以上が経過しており老朽化が進んでいます。また、留学生やトランスジェンダーの学生さんなど、多様化するニーズに対応できていません。そこで、共同トイレの個室化など、学生宿泊所の改修を進め、利用者の皆さんが安心して実習や研究に集中できる環境を整備します。さらに若手研究者の育成を支援するため、2019年からはじめた助成金制度を継続します。貴重な芦生の森を将来世代に引き継ぎ、多様な人がともに学ぶ場として発展させていくため、引き続き皆様のご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

ご寄付のご案内
https://www.ashiu.kais.kyoto-u.ac.jp/asiu100th/

ニュースレター52号 2020年11月 社会連携ノート