新人紹介 甲斐 嘉晃

里海生態保全学分野 甲斐 嘉晃 准教授

 2020年11月に里海生態保全学分野の准教授に着任しました。とはいえ、同分野の助教(助手)として着任したのが2004年ですので、2003年に産声を上げたフィールド研とは、長きにわたって共に歩んできたことになります。専門は魚類分類学で、魚類の多様性を形態学や遺伝学的な手法を用いて研究しています。里海生態保全学分野のある京都府舞鶴市へ赴任した当時は、日本海の生物多様性の低さに愕然とした思い出があります。日本海は、周囲を日本列島と大陸に囲まれた閉鎖的な海で、その歴史的な要因や地理的な要因から、太平洋と比べると圧倒的に種多様性が低いことが知られています。日本海沿岸には対馬暖流が流れていますが、太平洋を流れる強大な黒潮と比較するとかなり弱く、南方からやってくる色とりどりの魚はあまり見られません。深海には「日本海固有水」という冷たい水が存在し、太平洋で見られるような発光器を持つ綺麗な深海魚はほとんどいません。しかし、日本海を対象に研究をはじめてみると、日本海にはそこでしか見られない固有種が多く分布していること、それは日本海が閉鎖的な海であることと大きく関わっていることなどが分かってきました。日本海の深海に生息する魚は、オホーツク海やベーリング海に生息する魚と近縁であることが多く、そのような海域も研究対象に加えることで、より理解が深まると考えています。日本海は、旧教養部の西村三郎先生をはじめとする著名な研究者を多く輩出したフィールドとしても知られています。日本海で教育・研究を続けることに重圧を感じることもありますが、日本海の魅力を学生のみならず社会にも発信し続けていきたいと考えています。

ニュースレター53号 2021年2月 新人紹介