白浜水族館の非常用自家発電設備について

白浜水族館の非常用自家発電設備について

瀬戸臨海実験所 武藤 岳人

 瀬戸臨海実験所に併設している白浜水族館では、白浜周辺で見られる多様な魚類や無脊椎動物、約500種を常時展示しています。これらの生物を展示するためには様々な機械が必要です。海水を循環させるポンプや空気を送るブロワ、水温を調整するチラーなどがあり、24時間365日稼働しているものもあります。
 当然、機械の運転には電気が必要ですが、台風などの災害で停電することがあります。機械が止まることにより、展示生物にダメージを与え死なせてしまうかもしれません。このような想定のもと、水族館には非常用自家発電設備が備えられています。発電機の出力は176kWで、これは家庭用のエアコン88台分の消費電力に相当します。停電が発生すると自動で発電機の運転が開始します。発電した電力で全設備を動かせるわけではありませんが、展示生物を生かすのに必要な機械の運転を維持できます。発電機の燃料タンクだけだと最大30時間の発電にとどまりますが、ボイラー用の地下タンクから燃料を補給できるので、計算上295時間の発電が可能です。
 発電機が更新された2021年以降、長時間の停電は発生しておらず、発電機の出番はまだありませんが、飼育している生物にとって命綱のような役割で、停電時に確実に動かせる必要があります。そのためには日々のメンテナンスが欠かせません。2週間に一度、無負荷で点検運転を行い、1年に一度、業者による定期点検で消耗品を交換しています。維持費はかかりますが、生物を長期間飼育するには必要な設備です。少なくとも耐用年数30年までは使用できるよう、非常用自家発電設備の維持管理に努めたいと思います。

ニュースレター64号 2024年10月