ポケゼミ報告2011「木造校舎を造る:木の文化再生へ」

里山資源保全学分野 教授 柴田 昌三


 少人数セミナー「木造校舎を造る:木の文化再生へ」は2011年度は8名の登録者を迎えて行った。初めて定員割れとなったことは、来年度に向けて考えなければならないことである。登録者はすべて1回生で、所属学部の内訳は、法学部1名、経済学部1名、工学部5名、農学部1名(男子6名、女子2名)であった。実際に講義を受けに来た学生数は7名であった。
 今年度の少人数セミナーを担当したのは、地球環境学堂の小林正美教授、小林広英准教授と落合千帆助教及び柴田である。小林教授と小林准教授には、京都大学が知的財産権を有し、耐震性に優れた木造構造物である京大フレーム工法に関する講義や日本の木造建築物に関する講義、海外で模索されている木質資源を用いた農村計画の紹介等をしていただいた。柴田は、日本の森林に関する総論的な知識を伝えたほか、木質資源を供給する人工林や里山等の現状を紹介した。
 学内における講義は、京大北部キャンパスのフィールド研北白川試験地内に所在する、京大フレーム工法によって学内で最初に建てられた実験的構造物である建物と地球環境学堂の講義室を使って行った。これらの講義に加えて、一回の学外での実習も行った。これは京都府立植物園の見学である。残念ながら、例年行っているフィールド研上賀茂試験地における伐木・製材体験は、接近する台風のために中止とせざるを得なかった。植物園における見学は木本を中心とするさまざまな植物種を学び、その高い多様性と豊富さを学ぶことを目的とした。学生たちは植物の豊富さを学ぶとともに、その中から有用な植物を学ぶこととなった。見学は従来の一コマの時間では行い得ないため、午後半日を用いて行わざるを得ない。そのため、過密な受講スケジュールを組んでいる学生たちの中には参加できない者もいた。このことは残念なことであるが、現状のカリキュラムのシステムの中では致し方のないことである。
 講義終了後の学生たちからのアンケート結果を見ると、木造建築のみを学ぶつもりで受けた講義が予想外に木材生産も含めた講義であったことを感謝する一方、最終回に計画されていた伐木製材体験ができなかったことを心から残念に思っていることが汲み取れ、指導者としても残念な思いを持つこととなった。