実習報告2013「公開森林実習 近畿地方の奥山・里山の森林とその特徴」

芦生研究林、上賀茂試験地および北白川試験地において、「京都大学公開森林実習-近畿地方の奥山・里山の森林とその特徴-」を実施しました(公開実習、特別聴講学生1人・一般聴講学生7人)。

対象学生:他大学の全学部、主として2・3年次生対象。
担当教員:吉岡崇仁・安藤 信・嵜元道徳・德地直子・坂野上なお

実習内容:上賀茂試験地における近畿地方中部の里山の特徴を有する都市近郊林の自然植生とナラ枯れ・マツ枯れ被害、マツ類を中心とする外国産樹種とその特徴、芦生研究林における日本海側の多雪地帯の要素を有する原生的森林植生とシカによる食害による植生の変化、由良川源流域での流下過程における水質変化について、講義と実習を通して学ぶ。また南丹市美山町北地区の伝統的建造物群(かやぶきの里)、北山林業地における資料館(北山杉の里総合センター)、北白川試験地のj.Pod(地域産材を使用し工場で生産したリブフレームによるモノコック構造物)等を巡り、森と人との関わりを実地体験する。

受講生:14名
  特別聴講学生:1名(信州大学農学部)
  一般聴講学生:7名(東北大学理学部 1名、新潟大学農学部 3名、静岡大学農学部 1名、
            琉球大学農学部 1名、山西農業大学 1名)
  他大学科目受講生:6名(人間環境大学 4名、豊橋技術科学大学大学院 2名)

日程:2013 年9月11日(水)~ 9月13日(金)
 9月11日(水)
  ガイダンスおよび上賀茂試験地の概要説明
  里山近郊二次林・マツ林・ナラ枯れ被害・マツ枯れ被害の見学・解説
  芦生研究林の概要説明と講義
 9月12日(木)
  芦生研究林上谷周辺の天然林の観察およびシカ防護柵プロットの見学
  由良川上流部および湿地の水サンプルの採取
  下谷周辺の天然林および人工林の観察
  水試料のパックテストによる水質分析および解説
 9月13日(金)
  南丹市美山町北地区伝統的建造物群の見学(かやぶきの里)
  京都北山林業・北山杉を学ぶ(北山杉の里総合センター)
  北白川試験地・材鑑室の見学、およびj.Podの見学・解説
  レポート作成・提出

実施報告

京都大学フィールド科学教育研究センター 森林生態系部門 吉岡 崇仁

 今年度、特別聴講学生1名を受け入れたほか、協定締結学部から5名の一般聴講生の申込があった。また、大学院留学を目指す中国山西農業大学卒業生も受講生として受け入れた。また、人間環境大学と豊橋技術科学大学の「共同フィールドワーク」を実習科目として受け入れ、公開森林実習と並行して実施した。全体で8大学から14名の受講生となり、他大学生間の交流も活発で、有意義な実習になった。
 実習初日は、京都大学フィールド科学教育研究センターの上賀茂試験地に集合し、試験地の特徴であるマツをはじめとする外国産樹種の集積、マツ枯れ・ナラ枯れ・シカ食害といった近年の里山を中心とする問題について講義と林内の観察を行った。暖温帯里山の豊富な植物の種多様性について実習した。その後、芦生研究林に移動し、二日目には暖温帯から冷温帯の移行域での樹種構成の変化を実検すると共に、シカ食害による林床植生の激変を実感した。また、植生や森林環境の違いが渓流水質におよぼす影響を把握するために、パックテストによる水質分析を実習した。三日目は、人間と森林の関わりを体験するため、かやぶきの里の景観と生活を視察するとともに、北山杉の里総合センターを訪問し、京都北山林業の特徴を学んだ。最後に、京都大学吉田キャンパス北部構内の北白川試験地にて、各地から蒐集した材鑑と間伐材を利用した木造建築物j.Podを見学した。最後に、レポートを作成し、解散した。
 他大学の農学系学部生のほか、理学部や環境系の学部生が参加していた。さらに、人間環境大学からは社会人枠の学生も参加して、多様性に富む受講生の構成となった。そのため、樹木実習などで、学生間での知識・経験の違いが大きかったが、学生間での情報交換が活発であり、有意義な実習となった。

(参考情報)
フィールド研公開実習(他の実習も含む)の案内ページ
公開森林実習 平成25年度 募集情報