新人紹介 荒井 修亮

海洋生物環境学分野 教授 荒井 修亮

 京大農学部水産学科水産物理学講座(現・海洋生物環境学分野)を卒業、農林水産省に入省。農林水産技官として水産庁・農水省統計情報部・科学技術庁(現・文部科学省)など、霞ヶ関での行政官や、水産庁瀬戸内海漁業調整事務所(神戸市)で漁業調整・取締の担当課長を務め、様々な部署で13年間の役人生活の後に、ひょんなことで、母校に戻ることに。世間では転職は35歳までといわれているが、大学へ移ったときは36歳、最後のチャンスだった。
 農学部では坂本亘教授(現・京大名誉教授)が和歌山県南部でアカウミガメの研究を主導されていたが、既に学位論文のテーマとする院生が複数人いたこともあり、全く異なる研究を始めた。魚類の鱗や耳石の解析である。特に耳石は誕生から死に至るまで日々形成される非常に純度の高い炭酸カルシウムの固まりで、紛れ込む微量元素が魚類の育った環境を反映する。科学技術庁在籍当時に付き合いがあった理化学研究所に相談したところ、微量元素の分析に適した装置があるという。これがParticle Induced X-ray Emission(PIXE)との出会い。まず理研のPIXE で実験を始め、その後、京大にもPIXE があることが分かり、宇治で実験を行うようになった。マダイを全国各地から集めて、耳石中の炭酸カルシウム中に含まれるストロンチウムの量が水温と関係あることを確認した。これに鱗の隆起線の解析を合わせ学位論文とした。学位取得直後に、第39次南極地域観測隊の一員として、昭和基地近くのアデリーペンギンを当時の最新型のマイクロデータロガーで調査することとなった。帰国直後に新設された情報学研究科に異動し、森林系や動物系の先生方と「生物圏情報学講座」を軌道に乗せるとともに、21世紀COE、GCOE の事業担当者として、タイにおけるウミガメ、ジュゴン、メコンオオナマズの調査を行った。国内では(独)水産総合研究センターなどとの共同研究を各地で実施し、いまに至っている。興味あるテーマは海の生き物一般。引き続き国内外のさまざまな海域においてマイクロデータロガーや発信機を使った「バイオロギング」によるフィールド調査に出かけている。

ニュースレター30号 2013年8月 新人紹介