好評を博した時計台対話集会「森と里と海のつながり-“心に森”を築く」

フィールド科学教育研究センター長 田中 克


 京都大学では百周年記念事業の一環として時計台の建物が記念館となり、新たに500人収容のホールが作られ、社会に開かれた窓として多様な講演会などが行われている。フィールド科学教育研究センターは、“森と里と海のつながり”をキーワードに新たな統合学問領域として「森里海連環学」の創生を全国に先駆けて立ち上げようとしている。この新しい学問領域は、森と里と海の自然科学的ならびに文化的つながりの解明とともにわが国の豊かな自然の再生にとって不可欠な“つながり”や“めぐり”の価値観の再生に貢献することも目指している。そのためには基礎的な研究を徹底的に展開するとともに、こうした理念の共有化を外へ向かって大きく広げることが不可欠と考えられる。当センターでは6月2日より8月29日まで総合博物館春季企画展「森と里と海のつながり-京大フィールド研の挑戦」を開催するとともに、企画展と連携して時計台対話集会「森と里と海のつながり-“心に森”を築く」を7月17日(土)と24日(土)に開催した。
 7月17日(土)には日本の自然をこよなく愛し、長野県黒姫山麓に自ら森を築いて自然環境の大切さを伝え、保全の必要性を訴える多様な活動をされている作家のC.W.ニコルさんに「森を築いて海を思う」と題して御講演いただいた。24日(土)には学外から畠山重篤氏(牡蠣の森を慕う会代表)、寺島紘士氏(SOF海洋政策研究所所長)、安田喜憲氏(国際日本文化研究センター教授)をお招きし、センターの田中 克と梅本信也が加わり、それぞれの視点と切り口より森と里と海のつながりについての講演が行われた。両日ともに会場はほぼ満席となり、合計1,034人の皆さんに参加いただいた。参加者の年齢層は50代と60代を中心に10代から80代と幅広く、大半(3/4前後)は学外からの参加であった。両日ともに会場からの活発な質問や意見表明があり、非常に高い率で回収されたアンケートにも多くの共感・期待・意見などが寄せられた。全体評価として「非常によかった」と「よかった」が大半を占め、関係者一同苦労の甲斐があったと喜んでいる。なお、この対話集会の内容は一冊の本にまとめられ、京都大学学術出版会から刊行される予定である。(注:刊行されませんでした。)

ニュースレター2号 2004年11月 ニュース