ポケゼミ報告2003「照葉樹林の構造と維持」

フィールド科学教育研究センター 講師 西村 和雄

2003年7月22~24日
 徳山へ行くまでの段階でガイダンスを含め数回のレクチャーを行った。その過程で すでに一人が脱落してしまった。が、致し方ない。
 さて、本命の徳山へ向かったのだが、最初に訪れたのは、光市にある室積海岸。 花崗岩が風化した白い砂浜が延々と続いている東はずれに、峨眉山という標高百メー トル少しの山が海岸にせり出しているところ。ここには照葉樹の天然林がそのまま残っ ている。海岸近くには塩に強いシャリンバイ・トベラが、そして斜面を登ってゆくと、 典型的な照葉樹の林分構造になっている。下層植生まで場所によっては三層以上ある 複雑な構造の森を形成している。寿命のつきた木が枯死する為に、随所にギャップが 存在すること、台風の強風をもろに受ける立地が、風倒木を作るためだろう。
 雨が多くて、気温の低い天候が続いたために、林床には沢山のキノコが、この季節 だというのにでていた。雨のせいもあろうが、蚊がやたらと多い。薮蚊の大群が襲っ てくる。
 次は宿泊地でもある徳山の試験地。徳山市内からも山腹が遠望できる場所にある。 この中の天然林を調べて回った。ここはきれいな二層に分かれる林が形成されている。 上層木はタブ・クロキなどの照葉樹であるが、株元はほとんどが三本以上に分かれて いる。薪炭林として過去に何度も伐採され、切り株から萌芽更新してきた証拠である。 峨眉山の林床が明るい照葉樹林と違うところは、樹冠が閉鎖しているために、林床が 暗いことである。
 参加した二人は、森林科学専攻であったことも幸いし、森林や生物に多大の興味を 示してくれた。説明をすんなりと受け入れてくれるので、じつにやりやすかった。
 このあと二回、関西近郊の照葉樹林を訪れることにしている。

- 実習の様子 -