基礎海洋生物学分野 助教 中野 智之
京都大学附属白浜水族館にて,2020年3月20日(金)から9月22日(火)まで特別企画展「西之島探検展(後援:環境省)」を開催しました。
世界遺産である小笠原諸島の西之島は,2013(平成25)年の噴火・溶岩の流出に伴って南東沖に新たな島が誕生し,生態系が一から形成されていく過程を観察することができる数少ない場所です。去る2019年9月1日(日)~11 日(水)に,環境省主催の令和元年度西之島総合学術調査が行われ,鳥類,昆虫,海洋生物,植物,地質,火山活動等の専門家が派遣されました。私は,その中の海洋生物担当として,本調査に参加しました。この調査で鳥類10種,陸生節足動物33種,貝類4種,カニ2種,魚類1種,植物3種が確認されました(当時)。調査の航海中,「こちらでまとめるので白浜水族館で展示をやらせてほしい」という申し出から始まり,調査後半年という短期間で,調査結果を公表することができました。関係者の皆さん(東京大学地震研究所,自然環境研究センター,森林総合研究所,筑波大学,ふじのくに地球環境史ミュージアム,山梨県富士山科学研究所,アイランズケア小笠原)には感謝の気持ちでいっぱいです。企画展では,西之島の紹介,調査の意義,調査の方法,調査結果,そして,“生き物はどうやって西之島へ来たのか”についてパネルで解説し,西之島で採集した生物標本や溶岩,土などの貴重な標本に加え,調査隊の装備品(ガスマスクやヘルメット,靴など)や,携帯食を間近に展示しました。また,調査隊員へのインタビューやフォトギャラリー,食事,360 度カメラで撮影した西之島の旧島・海岸の映像など,探検の全容をふんだんに紹介しました。スペースは5畳ほどで,小規模な展示ではありましたが,内容が凝縮された展示となりました。アンケートは実施していませんでしたが,Twitter では「京都大学白浜水族館へ行った。(略)西之島の探検特集はレアな話満載で実によかったです」や「今回の噴火で完全に埋まってしまった旧島部分の調査記録も見られるし,探検好きな人にはたまらないロマンに溢れた展示だ。何回でも見たい」というコメントをいただき,嬉しい限りでした。
当初は,7月20日(月)までの会期でしたが,新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言の発令により,当館は感染拡大防止のため2020年3月31日(火)から休館となったため,本企画展も開始10日で公開できなくなりました。その後,5月21日(木)に大阪・京都・兵庫の3府県で緊急事態宣言が解除,5月25日(月)に全国で解除となったのを受け,6月3日(水)より白浜水族館が営業再開,本企画展も公開再開となりました。その際,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,来館者のマスクの着用,入館時の手指消毒,来館者数が多く密が生じる場合には入場制限をお願いする等の対策を行いました。しかし,5月16日(土)に予定していた西之島探検展記念講演会は,時期未定で延期となり,未だに開催できていません。入場者数は,有料来館者数27,668人,無料入場者数362人,計28,030人でした。多くの方々に西之島の調査結果をお知らせすることができて,とても嬉しいです。西之島調査はこれからも続くので,機会があれば,また行ってきたぞ西之島探検展(第二弾),まだまだ行くぞ西之島探検展(第三弾)と開催できればいいなと思っています。
年報18号 2020年度フィールド研2020年度の主な取り組み