ポケゼミ報告2012「地域連環学入門」

里地生態保全学分野 准教授 梅本 信也

 本ポケゼミは昨年度まで9回にわたり実施していた森里海連環学実習B「紀伊半島の森と里と海」の内容を移行し、今年度新設したものである。この実習では紀伊半島南部の自然域と里域(里山、里空、里地、里川、里浜、里海)を対象とし、連環学的視座からのフィールド調査の理論と実践的手法を体得し、現地での観察ならびに聞取り結果、各域から得られる各種サンプルやデータとそれらの客観的分析と地域文化的翻訳に基づき、地域連環の成立や諸相(環境、生物、文化)について考察し、地域の包括的保全と観光のあり方について議論するのが目的である。
 今年度は9月17日(月)から9月21日(金)の日程で開催した。学生の登録は8名であったが、連絡無しの欠席が2名あり、実際参加したのは6名であった(総合人間学部、教育学部、経済学部、医学部、工学部、農学部各1名ずつ)。当初は紀伊大島実験所を実習の拠点とし、そこで寝食を共にしながら、古座川をフィールドとした実習を行う予定であったが、代表担当教員の梅本信也准教授の都合によって、実習の拠点を瀬戸臨海実験所に移し、梅本准教授および京都市北白川の田川准教授に適宜連絡・報告・相談しながら、宮崎講師と中野助教とで実習指導を行った。ゆとり教育世代である学生にはポケゼミというプログラム形態が極めて有効であろうと確信された。
 日程と実習概要は以下の通りである。
 17日(月):紀伊大島実験所に13時に集合した。実習計画の変更について学生に説明しエントリーシートを記入させた後、瀬戸臨海実験所へと車で移動し、15時頃到着した。全体ガイダンスで実習の目的、従来の調査事例、古座川と紀伊大島・白浜の地理的関係等について説明と情報提供を行い、テーマ設定と班分けについて参加学生でディスカッションをさせ、フィールドを古座川に設定すること、班分けはせず全員まとまって一つのテーマに取り組むこと、産業・生活・ダム・水質をキーワードとしたテーマ設定をすることとした。
 18日(火):大雨警報の発令に伴い、この日の古座川でのフィールド調査は断念し、午前中は1時間ほど白浜中央公民館図書室で古座川に関する調べ物を行った後、車で古座川へ移動し、七川ダムを含む本流主要部を巡回し、大雨による増水時の川の様子を観察しながら、古座川の概要把握に努めた。その後、事前にアポイントメントを取っていた古座川町役場産業振興課での古座川町の町勢と災害に関する資料の受け取りと、教育委員会での町史編纂委員へのインタビューを行い、七川ダムを中心とした古座川町の歴史・産業・文化等に関する情報を得た。帰所後、資料のまとめと翌日の計画立案を行った。
 19日(水):この日は好天に恵まれ、前日に計画を立てた通り、古座川本流及び小川の計6箇所にて増水に注意を払いながら水質調査(各種パックテスト、pH試験紙、CTD、流速計を使用)を行った。帰路、教育委員会町史編纂室を再訪し、地質に関する資料を入手した。
 20日(木):報告書の題名を「自然と文化の連環学的発想に基づく古座川町の産業構造及び現況の分析」と決定し、これまでに得たデータ、情報、資料を総合・分析し、種々議論しながら仮報告書の作成を進めた。
 21日(金):宿泊棟の清掃後、仮報告書の作成を続行し、8ページにまとめて完成させ、アンケートと共に提出した。(2012.10.9作成)