2016年12月3日に、キロロ トリビュートポートフォリオホテル北海道で開催された2016年度(第48回)種生物学シンポジウムにおいて、森林育成学分野 の渡部俊太郎研究員がPlant Species Biology 論文賞(第10回)を受賞しました。
対象となった発表内容は以下の通りです。
Flowering phenology and mating success in the heterodichogamous tree Machilus thunbergii Sieb. et Zucc (Lauraceae)
Shuntaro Watanabe; Naohiko Noma; Takayoshi Nishida
Plant Species Biology 31: 29-37 (2016) DOI: 10.1111/1442-1984.12078
(研究内容の紹介)
この論文では日本の代表的な常緑樹であるタブノキの特異な開花様式と結実成功の関係を報告しました。タブノキの花は♀から♂に変化しますが、変化の途中で花が閉じる時間に12時間と24時間の2型があることがわかりました。このため、1日を通して花の咲き方を観察すると午前中に♀になり午後に♂になる株と、その逆に午前中に♂になり午後に♀になる株の2つタイプが集団の中に存在することを報告しました。この論文ではさらに結実のパターンを調べ、タブノキの花粉流動がもっぱら異なるタイプの株間で起こっていることを報告しました。こうした開花様式はこれまで栽培のアボカドなどで知られていましたが、野生種での報告はほとんどなく、貴重な発見と言えます。また結実パターンの結果は、タブノキを保全する際には2つのタイプの株をバランス良く残すことが大事になる、という応用研究に重要な示唆を与えることが期待されます。
結果については、種生物学会のウェブページに掲載されています。