芦生研究林/森林情報学分野 講師 松岡 俊将
斧蛇館は芦生研究林構内にある資料館です。斧蛇館の建物は、1975年に柱や板などの製品の倉庫として建築されました。その後、1992年に、大学の活動や芦生の森を一般の方にも知ってもらうため資料館として改修・開館しました。その際に、「斧蛇館(おのじゃかん)」と名付けられました。2020年、芦生研究林基金へご寄付により、資料館としての教育と展示機能の強化を目的にリニューアルが決まりました。
リニューアルは、2021年にコンセプトの立案、2022年に企画・デザイン案の作成、そして2023年から2024年にかけて展示物の作成と工事を行い、2024年6月25日のリニューアルオープン記念式典を持って完了しました。リニューアルでは、新しい斧蛇館が「多様な人が集い・学ぶ場」となることを目指しました。そこで、企画立案やデザイン・展示物の作成等のあらゆる過程において、展示の専門家だけではなく、自然科学と人文学・社会科学を含む研究者、芸術家、研究林内を案内しているツアーガイド、そして地域の関係者など多くの方に協力していただきました。
新しい斧蛇館では、森に入るだけでは分からない「自然の仕組み」や「人と自然の関わり」を紐解く場として、以下のような展示を行っています。入り口には、画家の平田有加氏の水彩絵巻「芦生の森 四季図絵巻」のレプリカを展示しました。この絵画は、シカの食害が深刻化する前の芦生の森をイメージし、芦生の森の生物多様性とその直面する課題を多くの方に伝えるために製作されたものです。続いて、斧蛇館と芦生研究林の説明(研究林の概要、研究林が直面している気候変動やシカの食害、多様な主体とともに進めている生物多様性保全の取り組みなど)、芦生研究林で行われてきた研究と成果、そして研究林設定以前から現在までの歴史を紹介するパネルを展示しました。パネルは、研究林の教職員を中心に、芦生研究林に関わってきた多くの方の協力を得ることで、生物(動物、植物、菌類)や物質循環の研究と、研究林の歴史に関する多様な論文・資料と写真等の情報を集約しました。資料館の中央には、これまで斧蛇館に展示されていた剥製や資料などをより臨場感あふれる展示するためのジオラマを作成しました。ジオラマの棚は、美山町に住む家具職人に作成を依頼し、芦生産の木材を一部使用しました。
リニューアル記念式典と見学会では、フィールド研の関係教職員、関連団体、地域の方など67人が集まってくださいました。資料館の展示物を前にしながら、過去の、現在の、そしてこれからの芦生についてお話をしている様子が、とても印象的でした。
資料館の改修を通じて、改めて芦生研究林の長い歴史や多様な研究成果と取り組みについて、学び、思いをはせることになりました。改修は企画から工事までのすべての過程で、様々な方のお力をお借りしており、新しい斧蛇館は多様な人の協働の成果といえます。多くの人と共にリニューアル作業を進める中で、芦生の森は様々な方に思われ、支えられている森であることを感じました。新しい斧蛇館が芦生研究林の教育研究の展開と、大学と社会の協働のきっかけとなることを祈っています。
年報22号 2024年度 主な取り組み
