里海生態保全学分野 特任助教 八柳 哲
舞鶴水産実験所では「新しい里山・里海 共創プロジェクト」の一環として、舞鶴市内を流れる主要河川である伊佐津川水系において魚類群集の多様性・季節性をモニタリングする試みを2023年度から実施しています。河口域から山間の上流部にかけて設定した12の調査定点において、魚類が水中に放出した環境DNAをろ過・抽出・分析する手法(以下、環境DNA手法)を活用して調査を進めてきました。
2023年度に行った春夏秋冬の調査の結果、合わせて70種を超える魚類の環境DNAが検出されました。この中には季節特有に検出された回遊魚(例:春に遡上するシロウオ)や、絶滅の危惧される純淡水魚(例:ナガレホトケドジョウ)など、様々な魚種が含まれます。基本的には下流側ほど検出される種数が多く、どの季節でも上・中・下流それぞれで明確に異なる群集構造が形成されていることがわかりました。ただし、夏だけは上流側でも下流側に引けを取らないほど検出種数が多いなど、季節ごとに特有なパターンも見られました。春先に海から遡上してくるアユは夏になるにつれて上流へと移動していくことはよく知られますが、回遊魚だけでなく純淡水魚を含む様々な魚種においても夏に上流で検出されやすい傾向が確認されました。魚たちが生活史を全うするために、下流と上流との間が妨げなく移動可能であることの重要性が示唆される結果と言えます。またこうした群集構造や種多様性の季節的・空間的なパターンは、伊佐津川本流と支流の池内川とでほぼ一致していることもわかりました。アユやニホンウナギなどの水産重要種や絶滅危惧種が、本流・支流の下流から上流までを季節に応じて幅広く利用していることが明らかとなり、今後のモニタリング方針を考えるうえでも重要な成果となりました。
この研究成果は論文として発表されているほか(Ito et al. 2025)、調査の様子と併せて「新しい里山・里海 共創プロジェクト」のウェブページにおいても紹介されています。引き続き、夏の渇水などの自然撹乱の影響や、里地での環境変動などの影響を評価するためにも継続的に調査を実施していく予定です。公益財団法人イオン環境財団の皆さまをはじめ、伊佐津川での研究を支援してくださっている皆さまに心より感謝申し上げます。
参考文献
Ito T, Yatsuyanagi T, Yokobe T, Shiomi M, Masuda R (2025) Seasonal changes in the structure of river fish communities in temperate Japan depicted using quantitative eDNA metabarcoding. PLoS One 20(7): e0328280.
(参考)新しい里山・里海共創プロジェクト 論文が公開されました & 最近の伊佐津川の様子
年報22号 2024年度 2026年01月
