舞鶴市ナマコプロジェクト

舞鶴水産実験所 研究員 大嶋 真謙・南 憲吏


 ナマコ(マナマコ)は舞鶴湾における重要な漁業対象種の一つであるが,近年,一大消費国である中国で日本産ナマコの需要が増加したことから,舞鶴湾でも漁獲圧が高まり資源の枯渇が懸念されている。そこで,ナマコ資源の増殖と管理を目的として,2009年11月から京都府漁業協同組合-京都大学-舞鶴市が連携した産学官共同プロジェクト「舞鶴湾におけるナマコ資源の増殖等に係る研究(ナマコプロジェクト)」を開始した。本研究では,舞鶴湾での人工種苗生産方法の確立や天然採苗方法の開発を行うとともに,舞鶴湾におけるマナマコの生態を解明し資源の増殖と管理方策の検討に取り組んでいる。
 人工種苗生産と天然採苗において,2010年度末までに以下のような研究成果が得られた。
 まず,人工種苗生産としては,舞鶴湾内で採集された親ナマコ61個体にクビフリン(産卵刺激剤)を注入し,158万個の受精卵を得た。孵化した浮遊幼生に植物プランクトン,着底以降の稚ナマコには付着藻類や配合餌料を与えて飼育し,3547個体の稚ナマコを放流サイズ(平均体長30 mm)まで育てることができた。稚ナマコは屋外,屋内(非空調),屋内(空調)の3カ所で飼育したが,成長と生残ともに屋外で最も良かった。
 次に,天然採苗の研究として,舞鶴湾14地点で天然採苗試験を実施したところ,10kgのカキ殻を詰め込んだ採苗器(目合い10 mm,深度2 m)で平均約100個体の稚ナマコが採苗された。特に湾奥では採苗数が多く,稚ナマコの体長も大きかった。また,目合い,付着基の質,付着基の量,設置深度が異なる9種類の採苗器27個(各種3個)を本実験所前に設置し,稚ナマコの採苗数や体長を比較した。その結果,舞鶴湾での天然採苗は,カキ殻10 kgを付着基とする目合い10 mmの採苗器を深度2 mに設置することが効果的であることが示唆された。
 さらに2010年度には,大連市において,中国大連市海洋漁業局,大連棒棰島海産股份有限公司(加工工場,種苗生産工場),陸上ナマコ養殖業者を訪問し,中国でのナマコの需要や養殖施設など,ナマコ産業に関する情報を収集した。
 2010年度の研究報告会を2011年2月に開催し,舞鶴市水産課,京都府漁業協同組合,漁業者らに技術提供を行うとともに2011年度の研究に関する意見交換を行った。その結果,2011年度の研究計画は以下の通りとなった。まず,人工種苗生産においては,中国での手法にならい,屋外に加えて遮光環境下でも稚ナマコを飼育する予定である。天然採苗の研究としては,2010年度の結果を踏まえた採苗器(100個)を用いて,1万個体の採苗を目標に天然採苗を実施する。さらに,資源管理方策として,ナマコ分布調査や海洋環境調査を実施し,稚ナマコの放流エリアの選定や保護区の提案等を行う。これら種苗生産,天然採苗,資源管理方策に関しては,京都府漁業協同組合や漁業者に技術指導を行う予定である。
 なお,今回得られた稚ナマコは,地域貢献の一環として,保育園児の食育・環境教育にも使用しており,「ナマコの保育所」,「給食でナマコ」など,新聞やテレビニュースで紹介された。

年報8号  2011年12月 p.9