(第4回) 森里海シンポジウム「森里海連環を担う人材育成の成果と展望」

 2017年10月28日(土)に,京都大学北部総合教育研究棟の益川ホールにて,表記シンポジウムを開催しました。朝から冷たい雨が降るあいにくのお天気でしたが,多くの方々がお越し下さり,115名の参加がありました。ヘッドセットによる英語の同時通訳もあり,シンポジウム全体が主に日本語で進められたものの,登壇者・会場参加者とも国際色豊かなシンポジウムとなりました。

 山下洋教授の基調講演「森里海連環学;森里海のもつれた三角関係を解く」では,日本の沿岸漁業漁獲量が大きく減少した理由を,これまでの森里海連環の研究成果から解説いただきました。森里海連環学の発端となった「森は海の恋人」の畠山重篤さんも会場にお越しくださっていました。
 特別講演では,環境省自然環境局の奥田直久・自然環境計画課長より,「『つなげよう,支えよう森里川海プロジェクト』について」と題してご講演いただきました。本プロジェクトは,森里川海の恵みの再生と循環,その恵みを支える社会をつくることを目指したものです。全国で地域単位のプロジェクトが進められており,森里海連環学を学んだ学生の活躍の場になりそうです。続いての特別講演として,「社会に新しい価値を生み出す:日本の「革新者」たちのキラースキル」と題して,齋藤義明・野村総合研究所2030年研究室長にご登壇いただき,国内100人の革新者へのインタビューから導き出されたイノベーションのための5つのキラースキルと1つの裏スキルについて,具体的な事例をあげてご紹介いただきました。
 シンポジウム中盤は,教育プログラムのレビュー報告を行いました。まず,朝倉 彰・森里海連環学教育ユニット長より,5年間のプログラムの成果が紹介されました。たとえば,2017年4月までにプログラムに登録した履修生は9研究科から298名,修了生は現時点で143名となり,大学院修了後は,国内外の企業だけでなく,中央官庁や自治体,大学などに就職しています。補助を受けてインターンシップを実施した学生は97名,行き先は31カ国に上っています。益川ホール前のポスターセッション会場には,シンポジウムに都合で参加できない修了生・履修生から寄せられたメッセージも掲示されました。
 会場の参加者全員での記念撮影の後,世界中から京都に再集合した修了生が登壇し,現在の仕事内容などの近況報告と,前日および当日の午前中に開催されたグループワークの報告がなされました。原田真実さん(経済産業省資源エネルギー庁),Kaya Abdulgaffarさん(トルコ・南東アナトリア森林研究局),Kieu Kinh Thiさん(ベトナム・ダナン師範大学)は,教育プログラムの講義や実習,他分野の大学院生との交流が現在の仕事に役立っていることを語ってくれました。グループワークの報告のうち,履修生を中心とした教育プログラムの成果の報告では,当日に発表者が急に変更になり,農学研究科修士1年の世古将太郎さんが発表しました。CoHHOプログラムに参加して役立った経験について,個人,研究およびネットワークづくりの項目ごとに意見を出し合った結果の報告です。グループワークでも,インターンシップやグループディスカッション,フィールドワークを通してさまざまな人と交流できたこと,新たな視点,知識,スキルを獲得できたことがメリットとして挙げられていました。今後のCoHHO研究・教育・実践活動の展開については,橋口峻也さん(環境省),Sandra Carrasco Manshilla Milenaさん(メルボルン大学研究員),松本京子さん(東京大学生産技術研究所特任研究員)が各グループの代表としてグループワークの報告をしました。最後に,柴田昌三・副ユニット長がグループワークの感想を述べました。
 クロージングセッションでは,インターンシップを受け入れている機関であるダナン大学のHoang Hai国際関係部長と環境NGOイカオ・アコの倉田麻里理事から,プログラムが目指してきたことやグループワークについてコメントをいただきました。また,本プログラム開講時の開講記念講演をしてくださったDenis Bailly教授からのビデオレターがとりやめになり,ベトナム・ダナン科学技術協会連合のHuynh Phuoc副会長からコメントをいただきました。最後に,ポスター賞の授賞式並びに本プログラムの共同実施者である日本財団より,梅村岳大・海洋事業部海洋チームリーダーからコメントいただき,シンポジウムは閉会となりました。

○ポスター賞受賞者  井上 博(農学研究科 博士後期課程3年)
          宮地 茉莉(地球環境学舎 博士後期課程2年)
          崔 麗華(農学研究科 修士課程1年)

~森里海シンポジウム報告~
(第1回) 人と自然のきずな~森里海連環学へのいざない~
(第2回) Integrated Ecosystem Management from Hill to Ocean
(第3回) 「人と自然のつながり」を育てる地域の力
(第4回) 森里海連環を担う人材育成の成果と展望
(第5回) 足元から見直す、持続可能な暮らし~森里海連環学をレジリエンスで紐解く~
<中止> Link again, Link to our future -森里海をつなぐ、未来へつなぐ-