ILASセミナー「森を育て活かす-林業体験をとおして考える」

2024年8月19日~8月22日に長谷川尚史准教授による京都大学1回生を対象とするILASセミナー「森を育て活かす-林業体験をとおして考える」が行われました。受講者は4名で、内訳は経済学部1名、工学部1名、農学部2名でした。その他TAとして地球環境学舎の学生が参加しました。

本セミナーは、下刈り、間伐、集材など、伝統的に日本で行われてきた林業作業を体験するとともに、最先端の林業の作業現場を見学、山村で暮らす人々との交流を通し、来るべき循環型社会の中で、森林資源をどのように持続的に利用していくかについて考え、自然科学、社会学など様々な側面から議論することを目的としています。

初日に近鉄橿原神宮前駅で集合した学生は、奈良県吉野町への道中で木質バイオマス発電所を見学した後、元吉野林材振興協議会展示館で吉野地域の伝統的林業と現状について学びました。午後は川上村にある270年生スギ人工林と作業道を見学し、和歌山研究林に向かいました。

2日目からは研究林内での実習が行われました。この日は間伐プロットの設置と毎木調査(胸高直径、樹高、形質、位置図・樹冠投影図作成)、下刈り作業を行い、3日目は研究林内で間伐木の選木と伐倒、集材作業などを体験しました。また夕方には有田川町の林業会社であるマルカ林業(株)を訪問して苗畑や炭窯を見学し、森林資源の新たな活用法について検討しました。晩にはマルカ林業(株)の皆さんとの交流会を開催させていただき、山村地域での暮らしや林業の楽しみなどについて、さらに深掘りしたお話しをお聞きしました。

最終日は国の重要文化的景観に選定されている棚田である「あらぎ島」を見学した後、高野山の中門と壇上伽藍、奥の院を見学し、木材の文化財への利用について学びました。午後は奈良県橿原市にある十津川村情報発信拠点の産直住宅施設「木灯館」において、日本の山村の現状と新たな取り組みについて学習し、近鉄橿原神宮前駅で解散しました。

今回のILASセミナーに参加した学生には、受講したことで得られた知識や経験を、今後の学生生活や研究活動、将来の職業選択などに役立ててもらえることを期待しています。

なお,和歌山研究林でのILASセミナーは本年で最終となります。次年度の実施地や内容は未定ですが、森林・林業が抱える問題の解決には、様々な学問分野の連携が不可欠なことから、何らかの形で同様のセミナーが継続される予定です。

吉野地域で生産された製材品について説明を受ける
刈払い作業の体験
プロット内の毎木調査
樹冠投影図を作成するためのデータ計測
立木の伐倒方法の説明
立木の伐倒作業の体験
重機を使用した集材作業の体験
苗木を生産している現場を見学
炭焼き窯の見学
展望台からあらぎ島と有田川を眺める
高野山の境内を散策
木灯館で十津川村の林業について説明を受ける