柴田 昌三

参考情報(2013-03-31 までの情報です)


 地球環境学堂/地球親和技術学廊 景観生態保全論分野 教授
 フィールド科学教育研究センター 非常勤講師
 学際融合教育研究推進センター 森里海連環学教育ユニット 教授
 (フィールド科学教育研究センター センター長 2011-2012年度)

(2004年度公開)

1.研究分野
 私の研究生活は小型タケ・ササ類の造園的利用に関する研究から始まりました。その後、研究対象は造園・緑化一般、そしてタケ類全般へと拡がり、さらに緑化分野の環境林や竹林の相手をしているうちに里山へと研究対象が広がっていきました。
(1)里山の生態と里山資源の再利用に関する研究
 里山はほんの数十年前まで私たちの生活に必要不可欠の存在でした。料理の煮炊きや暖を取るためのエネルギー源は薪や炭であったし、田圃や畑に鍬込む肥料分の一部も里山から得るのが常識でした。今も世界の多くの地域では同じような人間と里山の関係が続いています。しかし、日本では石油資源から得られるエネルギーへの転換や化学肥料への転換によって里山は放置されました。こうして、農業生態系とともに上手に維持されてきた二次的自然の一部としての里山は今や荒廃の一途をたどっています。その一方で、近年では、地球温暖化問題の中で森林に二酸化炭素吸収源としての役割が求められています。また、大都市周辺では、わずかに残された自然としても注目されているほか、絶滅危惧種に指定されるような生物がこれらの里域では急増しています。このような状況の中で、かつてとは異なる新たな里山の存在の意味を探ろうとしていくつかの研究をしています。これまでに行った研究には、藪状になった森林に植生管理を行って春には自生種であるツツジ類が花盛りになる美しい公園を再現するための研究、かつて行われたような樹木の伐採が森林の環境や生物相に与える影響に関する研究、文化的景観としての里山や林業地の評価のための研究などがあります。また、管理によって里山から産み出される豊かな生物資源を有効に利用するために、コンソーシアムやNPO活動を通じた社会活動も行っています。これらについては、人文科学的な視点を持つ専門家達と共同研究を始めつつあります。

(2)緑化植物に関する研究
 既存の自然を相手にした里山に関する研究の他に、新たに造り出される緑を有効に育てるための研究も行っています。日本には治山などの観点から培われてきた緑化に関する長い歴史と優れた技術があります。数十年前、環境悪化が叫ばれた頃には何でもいいから緑を植えることだけが奨励されましたが、現在では里山の荒廃にも見られるように、質の高い自然の創出が求められています。一方でこれらの自然を維持していくノウハウは失われつつあります。さらに、過去数十年の土木技術の発展にともなってこれまで考えもしなかったような場所の緑化が求められる時代になっています。また、自然破壊につながるような開発行為を行う上で、いかに破壊される前の自然を再生できるか、といった技術も求められています。これまでに、このようなニーズに応えるために様々な研究を行ってきました。それらの中には、ダム湖岸の湛水面の緑化に関する研究、擁壁緑化工法の開発に関する研究、道路法面緑化工法の開発に関する研究、などがあります。現在行っている研究は、埋立地における周辺の海岸植生構成種を用いた緑化手法の開発に関する研究、かつて伝統的に行われていた周辺植生構成種を用いた治山技術を現代に再現するための研究、周辺植生をそのまま道路法面に移植する工法の開発に関する研究、などです。

(3)タケ類の生理と緑化利用に関する研究
 (1)と(2)で述べた研究のうち、タケ類に特化した研究を行っています。里山では竹林拡大の実態を生態的に把握するための研究やそれが埋土種子に与える影響に関する研究を行っています。また、造園・緑化植物としての利用に関する研究も継続しています。さらにタケ類の開花は数十年から百数十年に一回の大イベントであることから、その開花周期を知るためにタケ類の種子を集め、起源のわかっている苗の育成を行っているほか、数十年前に開花したことがわかっているマダケ林では、マダケ回復後の植生変遷の追跡調査も行っています。タケ類の開花に関しては、北山のチュウゴクザサの他、現在48年ぶりに開花中の竹の調査が進行中です。

2.好きなもの,趣味
 竹に関する研究の関係では海外に行くことが多いため、元来の酒好きに加えて、旅先で日本では入手しにくい酒を見つけてくるのが趣味になっています。というわけで、私の部屋には時折、「日本ではここにしかない」アルコールがあります。
 大学時代は京大オーケストラでオーボエを吹いていました。30歳代半ばまでは市民オーケストラなどで吹き続けていましたが、あまりの忙しさに今はやめています。
 代わって、昔から好きではありましたが、旅行自体が趣味のようになっています。最近はだんだん欧米に行く機会も少なくなり、インド北東部の山の中やコロンビアのゲリラ地帯など、「地球の歩き方」にも載っていないような地域への旅行の機会が増えています。

3.その他
 これまでの出版物:「日本産主要竹類の研究」葦書房、「造園を読む」彰国社、「緑化の植栽基盤」ソフトサイエンス社、「ランドスケープと緑化」技報堂出版、「ランドスケープデザインと環境保全」角川書店、「ネコとタケ」岩波書店、「ミティゲーション」ソフトサイエンス社、「地球環境学のすすめ」丸善(いずれも共著)、「竹・笹のある庭」(創森社)など
 海外NGO活動:CENEED(ネパール環境教育開発センター)後援会(ネパールのカトマンズで私の設計した環境公園で環境教育を行っています。)
 人格:大酒のみのバリバリの関西人、すなわち阪神ファン


(フィールド研における経歴 情報整理 2015-08-05)
2003-04-01/2007-01-31 里域生態系部門 助教授(地球環境学堂と両任)
2007-02-01/2012-03-31 里域生態系部門 教授
2007-04-01/2011-03-31 副センター長
2007-04-01/2010-03-31 上賀茂試験地長
2009-12-01/2011-03-31 和歌山研究林長
2010-07-01/2012-03-31 北白川試験地長
2011-04-01/2013-03-31 センター長・管理技術部長・企画情報室長
2012-04-01 地球環境学堂 教授に異動(センター長は継続)
2012-04-01 森里海連環学教育ユニット 教授