ポケゼミ報告2009「フィールド実習“森は海の恋人”」

海洋生物多様性保全学分野 白山 義久 教授


 2009年度フィールド実習“森は海の恋人”を,8月24日から29日まで(移動日を含む)宮城県気仙沼市唐桑町にある水山養殖場と南三陸町自然環境活用センター(志津川ネイチャーセンター)において実施した。宿泊には,民宿を利用した。
 参加者は5名が登録していたが,1名が欠席したため,結局4名となった。内訳は医学部2名・法学部2名だった。そのうち2名は女性だった。講師として,畠山重篤氏(京大フィールド研社会連携教授・水山養殖場)とそのご子息の畠山信氏,並びに横浜康継氏(南三陸町自然環境活用センター所長・筑波大学名誉教授)の参加を得た。市民参加型教育研究に関する協定書を交わしているNPO法人エコロジー・カフェの会員も4名参加した。
 8月25日にはNaGISAプロトコルにもとづく岩礁域のフィールド調査を,南三陸町において実施した。サンプリング終了後は,サンプル処理として海藻サンプルの分類・同定・重量測定,1mmのフルイでのマクロベントスサンプルの解析(分類・同定・計数)と0.063mmフルイを用いたメイオベントスサンプルの作成を行った。
 8月26日はまず気仙沼に移動し,午後から畠山氏による森里海の連環に関する講義を受講した。また白山も海洋酸性化などの海洋の諸問題に関する講義をした。
 8月27日は,畠山氏の案内で気仙沼湾・大川水系を見学した。そして,昨年来の宿題であった,「ひこばえの森」における植林を行った。この経験は,学生にとって大きかったようで,将来自分の植えた木を見に来たいという感想があった。その後,森は海の恋人運動の原点である牡蠣の森の見学を行った。
 8月28日には,早朝に気仙沼漁港を見学し,その後水山養殖場の養殖いかだから,岩礁性生物の多様性がもっとも高い養殖カキのサンプルを採集した。そして,動物を分別し,その分類について解説を行った。昼食後は,海草も場のマクロベントスを,ドレッジを用いて採集した。
 8月29日には,現地を出立して仙台にて解散した。有料道路が延びたため,仙台と現地との移動がかなりスムーズになった。
 学生には,初体験のことが多く,森里海の連環について強い印象を持ったものと考えられた。特に今年度は植林ができたことから,今後も長い学生と地元との触れ合いが続くことが期待できる,充実した6日間を過ごすことができたものと評価している。